哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

第4回本のフェス2019のこと

■第4回本のフェス2019のこと

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 東京は市ヶ谷、飯田橋、神楽坂界隈にて開催され、今年で4回目を数える催し、「本のフェス」に行ってきた。今年は2019年3月23・24日(土・日)開催とのこと、せっかく土曜日に行ってきたので、日曜日にこれを見て誰かが行きたくなってくれることを期待しつつ、この記事は土曜日中に仕上げて、(普段は日曜22時更新だけれど、土曜日の夜に)投稿するのである。

 

●事件概要

 事件はお馴染みの中央総武線各駅停車三鷹行きで、私が千葉方面から、市ヶ谷駅を目指しているときに起きた。いや、正確に言うと、私は事件発生の瞬間、気を失っていたので、いかにこの事件が発生したのか、わからないことの方が多い。とにかく、その事件が発覚したのは、私の乗った電車が、大久保駅を発車しようとした頃である。被害者(私)が、ふと目を覚ますと、電車の次の停車駅が東中野である旨、表示がなされていた。

 被害者は、しばし自分の置かれた状況が理解できなかったという。東中野駅、知ってはいるが、そこで下車したことはないし、滅多に通る駅でもない。はて。そう、寝過ごし、である。しかし、私はできる男なので、ミスを最小限に抑えるべく、可及的速やかに、次善の策を講じた。東中野駅で下車すると、ホームの反対側に発着する、津田沼行きに乗ったのである。そして、再び大久保駅を過ぎ、新宿、代々木、千駄ヶ谷信濃町四ツ谷、市ヶ谷、飯田橋駅で下車をした。

 えっ? 目的地は市ヶ谷駅ではないのかって? このイベントのメインの会場はDNPプラザ、DNP市谷左内町ビルの大日本印刷関連のビルであり、そちらの両ビルの最寄駅は市ヶ谷駅なのだが、サブ会場である毘沙門天善國寺の落語&講談公演に申し込んでいて、時間に余裕を持って動ていたはずが、どういうわけだか気が付いたらそれの時間が迫っていたので、先に善國寺の最寄の飯田橋に向かったのだよ。

 

新潮文庫誘拐監禁事件

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「さあ、貴様一人の力で、キュンタくんの絵を描け。さもないとこの新潮文庫はわたさない」毘沙門天善國寺に着くなり、自称広告代理店勤務というおねえさんは、私を脅迫してきた。

「わ、わかった、描きます。描きますから、新潮文庫ください」みたいなやり取りの後、私はクーピーペンシルでキュンタ君を描いた。新潮文庫のキャラクターキュンタくんをPRするブースで、参加すると、自分の描いたキュンタくんと引き換えに、好きな新潮文庫をもらえる、という趣向である。絵を描いている最中も、可愛いですねえ、春らしい色ですねえと、美人広告代理店社員が、その気にさせるようなことを言ってくる。ひょっとして、私に気があるのかしらん。

 上の写真が私の書いたキュンタくん、調べてみるとキュンタくんはロボットなのだそうだ。というか、新潮文庫ってパンダじゃなかった? あいつはどこに行ったのだ?

 

www.qunta.jp

 

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 そして私がいただいたのが、城山三郎の『官僚たちの夏』。なんとなく、決めかねたので、件のおねえさんに、読んで面白かったのありますか、と聞いたら、これを推してくれた。私もタイトルは知っていて、ちょうど興味があったので、こちらを。ありがたい話である。

 

●尻流複写二(落語)×神田鯉栄(講談)パフォーマンス&トークライブ

 そうこうしている間に、お目当ての落語と講談が、寺の一室で始まる。シリル・コピーニさんは日本語で落語をする唯一のフランス人、とのこと。落語家としての修業はしていないので、正式な落語家ではなく、落語パフォーマーの肩書で活躍なさっている。また、翻訳家として、『名探偵コナン』をはじめとした日本のマンガやゲームのフランス語訳もなさっているそうだ。神田鯉栄師は女性講談師であり、師匠は神田松鯉師、とのこと。

 

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 今回の公演は2時間強ほどで、本にまつわるトークとお二人のパフォーマンス。

 二人そろっての挨拶のあと、まず高座に上がったのはシリルさん、自己紹介をしつつ、フランスと落語にまつわるトークで会場を盛り上げる。フェスはフランス語だと尻の意、とか。フランス語のポンヌフは新橋のことで、ミルフィーユ(ミルフェイユ)は千葉のこと、とか。知っておくと便利なフランス語、サヴァを使った小話とか、そこから噺に入る。自ら世界で唯一と語る、日仏同時通訳版の「寿限無」だ。ご存知「寿限無」を駆け足で、日本語仏語交じりで、つまり金坊が寿限無の母親に「マダァム」とか語り掛けるのだけれど、演じる。そして、自分の友人にも日仏の夫婦で、子どもの名前に悩んで、近所の教会の神父さんに健康でフランスっぽい名前をと相談しに行ったとつなぎ、ここからが本題。フランス版寿限無に持っていく。ジュテームジュテームとか。寿限無の名前で遊ぶのは、私は落語では聴いたことがないのだけれど、漫才でナイツが、10ゲーム10ゲーム後藤の振り逃げ……、と野球バージョンにしているは見たことがあるので、よくある展開なのだろう。面白かった。それでジュテーム20歳の誕生日、友達の金太郎の挨拶でも、ジュテームの名前が長すぎて、シャンパンの気が抜けてしまう、というのがサゲ。仕切り直して、シリルさんの本についての単独トーク。自身の翻訳した作品を持ってきて、翻訳について、例えばオノマトペのシーーーーンが、フランス語には概念としてないとか、興味深い話をなさっていた。

 

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 休憩をはさみ、再開は、お二人そろっての対談から。お二人の本の楽しみ方。趣味の本はもっぱらフランス語のミステリーというシリルさんに対して、鯉栄師は谷崎潤一郎の『秘密』など、純文学の名作を、何度も読み返し、新たな発見をするとのこと。本の最後の出版社名などのクレジットのページに、読んだ日にちを書いていき、それが7つ溜まっている本もあるとか。

 

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 出番変わって、鯉栄師の高座は新作講談の「鉄砲のお熊」。江戸時代、女相撲のお熊と、その幼馴染による、恋の物語と言える。調べてみたら、落語家の三遊亭白鳥師の新作落語を講談に移植したもの、のようである。面白かった、聞き入ってくぎ付けになってしまった。講談でこんなに引き込まれたのは、初めてである。まあ、新作だからだろうけれど。序盤がそっくり回想シーンだったところとか、ちょうすけがときじろうに思いを寄せるシーンとか、面白い。

 

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 こうして、お二人による熱い高座が終わり、お見送りを頂いて、散会となった。行ってよかった、そう思える会であった。

 

DNP市谷左内町ビル

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 こちらでは、本の雑誌社を中心とした、本の雑誌商店街をはじめとする、出版社や古書店等が出展。サイン本、というのに惹かれ、沢野ひとし『中国銀河鉄道の旅』と宮田珠己『無脊椎水族館』を購入。さらに、自分で豆本を作れるキットを衝動買い。

 

●ファブすること

 ここではいくつかワークショップも開かれており、私はファブ女なる団体のワークショップに参加した。

 

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 写真で光っているのが、私が作った作品である。ボタン電池に、LED豆電球をつないでシールで固定して、安全ピンをはっつけて、ものの数分でできる、世界一簡単なデジタルファブリケーションである。デジタルファブリケーションって何? それは私も知らない。とにかく彼女らは、DNP有志のサークルでデジタルファブリケーションに取り組む、女子たちなのだという。皆さんも、時にはファブしてみるのも、良いのでは?

 

mirai.dnp

 

DNPプラザ

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 やっとメイン会場のDNPプラザへ。チコちゃんのパネルが出迎えてくれた。実は、この催し、各会場でそこにまつわる文豪の名字のスタンプが用意されており、そのスタンプでラリっていき、個数に応じて、景品がもらえる。私は三か所、DNPプラザで、Lサイズの写真2枚を無料で印刷できる券をもらったので、逆上しながら家族写真をプリントして、帰宅。皆さんもぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

honnofes.com