哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

新宿末広亭5月中席のこと

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■新宿末広亭5月中席のこと

 割と久しぶりに、寄席に行った。ホール落語等にはいっていたのだが、寄席はなかなか足が向かず……。たまたま、柳家花緑さんが、新宿末広亭の夜の部でトリ(主任)をつとめられるとのことを知り、都合がつきそうだったので、どうせなら朝から時間が空いてるしと、昼夜通しで、鑑賞した。

 全体通して、面白かった。落語やその他の寄席芸に集中している際は、頭はフル回転で、語られた光景を想像するので、日常の些細なこと、仕事の中での気になることが入り込むすきがなく、普段の自分を忘れて、語りの世界に入ることができるのが良い。なお、昼の部で一部、昼寝をして、落語を2席ほど聞き逃したのは秘密。

 というわけで、以下、面白かった人、噺、気になった物など、バラバラと書いていく。

 

すず風にゃん子金魚の漫才

 金魚さんのゴリラが相変わらず良い。にゃん子さんが金魚さんのことを後期高齢者、年金受給者と呼ぶが、Wikipediaによると「生年非公開。年金受給者だと自ら認めるネタがある(実際にはその年齢には達していない)。」らしい。なるほど。

 

●ホームランの漫才

 この日、一番湧いていたかもしれない。面白かった。ハズキルーペの話など。 

 

宝井琴調の講談「大岡政談人情匙加減」

 もともと、講談は苦手だったが、この日は興味深く聞くことができた。琴調さんは落語は人の失敗を語る、一方で講談は人の良いところ、成功を話して聞かせる、とおっしゃっていた。女郎遊びから足を洗って更生した医者と、彼に恋し、また救われた女郎にまつわる、大岡裁きの物語。成功談、いい噺を語るとはいえ、適度にユーモアを入れてくださるのが、今回聞きやすかった点か。ワイルドな風貌も素敵である。

 

●入船亭扇辰の落語「田能久」

 初めて聞いたが民話等で語られているものらしい。うわばみ(蟒蛇)って大蛇のことか。大蛇って人に化けるんか、と、勉強になった。

 

柳家緑太の落語「やかん」

 出てきて、目を引くのはその風貌である。イケメンである。若手落語家として、本当に形が良いなあ、と思う。噺もよかった。師匠花緑さんに似ている、明るくなめらかな語り口で、講談みたいな部分も、聞きやすかった。

 

柳家緑君の落語「権助魚」

 やはり、緑太さんと同様、師匠の花緑さんによく似ていると感じた。明るく、ハイテンションな語りでありつつ、説明、描写が丁寧でわかりやすいと思う。権助魚は山育ちで田舎者の権助が、魚をまったく知らない、ということにちなんだ滑稽な噺。

 

●台所おさんの落語「芋俵」

 ユーモアのある表情、雰囲気で、優しげに噺をする。なんとなく噺に引き込まれるオーラを感じる。芋俵は初めて聞いた話であるが、マクラで落語に登場するどろぼうは間抜け、と説明の通りの、間抜けなどろぼうにまつわる噺。

 

柳家花緑の漫才「おせつ徳三郎」

 マクラからして、面白く興味を惹かれるものである。過去の名人たちの音源がきちんと残っている中で、過去最大の落語家の人数がいる現代落語界が一番良い、ということを話していたが、確かにそれはそうだと、落語が気軽に聞ける良い時代に生きていると感じるものである。そんな昔より今が良いという話の中で、昔は身分違いの恋は難しかった、という流れにして、おせつ徳三郎の、大店のお嬢様と奉公人との許されざる恋にまつわる噺に。刀やの主人、徳三郎の演技がとてもうまいし、噺の間の取り方が適度。流れるように進んでいきながら、呼吸を入れるところはきちんと入れるので、続きが気になるし、かと言ってテンポが悪くなることもない。本当に聞き心地のよい口演であった。

 

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■演芸のこと

 私は日本の古典芸能の中で、演芸(寄席芸)が一等好きである。落語を筆頭に、講談、浪曲、漫才、コント、奇術、俗曲……。初めは面白い、滑稽な噺を演じるからだと思っていた。しかし、必ずしもそうとも言えなそうである。例えば、落語でも人情噺など、主題が笑える噺でないこともあるのだから。しかし、そういったいい噺であっても、基本的にはくすぐり等、聞かせる工夫がなされる。客があって、演者がいて、演者は客が聞いてくれるよう、想像してくれるような、手を尽くす。そういったサービス精神、そして即興性。それは1人で演じることが主である落語や講談など、ならではかもしれない。歌舞伎や能、文楽のように、多くの人の手による芸能は、なかなかその場でその日の客に合わせたサービスは、行いづらいだろう。しかし、落語は違う。その時、目の前にいるのが子どもであれば、すぐに子供向けの演題を選び、子どもが分かる口調で説明することができる。そういう自由さが落語、演芸にはあるのである。

 とはいえ、そういう自由さがありながら、失敗してしまうことはあるようだ。緑君さんがある小学校での公演で、「妾」と言ってしまったことがあるらしい。前の方の女の子が隣の母親に向かって「妾ってなあに?」、演者をにらむ母親、緑君さんはたいそう困ったらしい、なにしろ、その母親が妾かもしれないし、と。

 

落語 古今亭まめ菊 たらちね
落語 柳亭市弥 牛ほめ
音楽パフォーマンス のだゆき  
落語 柳家三之助 のめる
落語 春風亭正朝 紀州
漫才 浮世亭とんぼ
横山まさみ
 
講談 宝井琴調 大岡政談人情匙加減
落語 春風亭柳朝 宗論
ギター漫談 ペペ櫻井  
落語 桂扇生  
落語 林家正雀  
紙切り 林家正楽  
落語 春風亭小はん 親子酒
落語 柳家喬の字 紙入れ
奇術

松旭斉美登

   美智

 
落語 柳家一九 片棒
落語 金原亭馬生 不精床
太神楽 鏡味仙三郎社中  
落語 柳家小満ん 居残り佐平次
落語 柳家寿伴 真田小僧
落語 柳家緑太 やかん
俗曲 林家あずみ  
落語 入船亭扇辰 田能久
落語 台所おさん 芋俵
漫才 ホームラン  
落語 古今亭菊志ん  
落語 三遊亭吉窓 山号寺号
奇術 アサダ二世  
落語 林家鉄平 代書
落語 柳家小さん 二人旅
落語 柳家緑君 権助
漫才

すず風にゃん子

   金魚

 
落語 柳家禽大夫 元犬
落語 三遊亭円丈 漫談
太神楽 翁家社中  
落語 柳家花緑 おせつ徳三郎