■新宿末広亭5月中席のこと
割と久しぶりに、寄席に行った。ホール落語等にはいっていたのだが、寄席はなかなか足が向かず……。たまたま、柳家花緑さんが、新宿末広亭の夜の部でトリ(主任)をつとめられるとのことを知り、都合がつきそうだったので、どうせなら朝から時間が空いてるしと、昼夜通しで、鑑賞した。
全体通して、面白かった。落語やその他の寄席芸に集中している際は、頭はフル回転で、語られた光景を想像するので、日常の些細なこと、仕事の中での気になることが入り込むすきがなく、普段の自分を忘れて、語りの世界に入ることができるのが良い。なお、昼の部で一部、昼寝をして、落語を2席ほど聞き逃したのは秘密。
というわけで、以下、面白かった人、噺、気になった物など、バラバラと書いていく。
●すず風にゃん子金魚の漫才
金魚さんのゴリラが相変わらず良い。にゃん子さんが金魚さんのことを後期高齢者、年金受給者と呼ぶが、Wikipediaによると「生年非公開。年金受給者だと自ら認めるネタがある(実際にはその年齢には達していない)。」らしい。なるほど。
●ホームランの漫才
この日、一番湧いていたかもしれない。面白かった。ハズキルーペの話など。
●宝井琴調の講談「大岡政談人情匙加減」
もともと、講談は苦手だったが、この日は興味深く聞くことができた。琴調さんは落語は人の失敗を語る、一方で講談は人の良いところ、成功を話して聞かせる、とおっしゃっていた。女郎遊びから足を洗って更生した医者と、彼に恋し、また救われた女郎にまつわる、大岡裁きの物語。成功談、いい噺を語るとはいえ、適度にユーモアを入れてくださるのが、今回聞きやすかった点か。ワイルドな風貌も素敵である。
●入船亭扇辰の落語「田能久」
初めて聞いたが民話等で語られているものらしい。うわばみ(蟒蛇)って大蛇のことか。大蛇って人に化けるんか、と、勉強になった。
●柳家緑太の落語「やかん」
出てきて、目を引くのはその風貌である。イケメンである。若手落語家として、本当に形が良いなあ、と思う。噺もよかった。師匠花緑さんに似ている、明るくなめらかな語り口で、講談みたいな部分も、聞きやすかった。
●柳家緑君の落語「権助魚」
やはり、緑太さんと同様、師匠の花緑さんによく似ていると感じた。明るく、ハイテンションな語りでありつつ、説明、描写が丁寧でわかりやすいと思う。権助魚は山育ちで田舎者の権助が、魚をまったく知らない、ということにちなんだ滑稽な噺。
●台所おさんの落語「芋俵」
ユーモアのある表情、雰囲気で、優しげに噺をする。なんとなく噺に引き込まれるオーラを感じる。芋俵は初めて聞いた話であるが、マクラで落語に登場するどろぼうは間抜け、と説明の通りの、間抜けなどろぼうにまつわる噺。
●柳家花緑の漫才「おせつ徳三郎」
マクラからして、面白く興味を惹かれるものである。過去の名人たちの音源がきちんと残っている中で、過去最大の落語家の人数がいる現代落語界が一番良い、ということを話していたが、確かにそれはそうだと、落語が気軽に聞ける良い時代に生きていると感じるものである。そんな昔より今が良いという話の中で、昔は身分違いの恋は難しかった、という流れにして、おせつ徳三郎の、大店のお嬢様と奉公人との許されざる恋にまつわる噺に。刀やの主人、徳三郎の演技がとてもうまいし、噺の間の取り方が適度。流れるように進んでいきながら、呼吸を入れるところはきちんと入れるので、続きが気になるし、かと言ってテンポが悪くなることもない。本当に聞き心地のよい口演であった。
■演芸のこと
私は日本の古典芸能の中で、演芸(寄席芸)が一等好きである。落語を筆頭に、講談、浪曲、漫才、コント、奇術、俗曲……。初めは面白い、滑稽な噺を演じるからだと思っていた。しかし、必ずしもそうとも言えなそうである。例えば、落語でも人情噺など、主題が笑える噺でないこともあるのだから。しかし、そういったいい噺であっても、基本的にはくすぐり等、聞かせる工夫がなされる。客があって、演者がいて、演者は客が聞いてくれるよう、想像してくれるような、手を尽くす。そういったサービス精神、そして即興性。それは1人で演じることが主である落語や講談など、ならではかもしれない。歌舞伎や能、文楽のように、多くの人の手による芸能は、なかなかその場でその日の客に合わせたサービスは、行いづらいだろう。しかし、落語は違う。その時、目の前にいるのが子どもであれば、すぐに子供向けの演題を選び、子どもが分かる口調で説明することができる。そういう自由さが落語、演芸にはあるのである。
とはいえ、そういう自由さがありながら、失敗してしまうことはあるようだ。緑君さんがある小学校での公演で、「妾」と言ってしまったことがあるらしい。前の方の女の子が隣の母親に向かって「妾ってなあに?」、演者をにらむ母親、緑君さんはたいそう困ったらしい、なにしろ、その母親が妾かもしれないし、と。
落語 | 古今亭まめ菊 | たらちね |
落語 | 柳亭市弥 | 牛ほめ |
音楽パフォーマンス | のだゆき | |
落語 | 柳家三之助 | のめる |
落語 | 春風亭正朝 | 紀州 |
漫才 | 浮世亭とんぼ 横山まさみ |
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講談 | 宝井琴調 | 大岡政談人情匙加減 |
落語 | 春風亭柳朝 | 宗論 |
ギター漫談 | ペペ櫻井 | |
落語 | 桂扇生 | |
落語 | 林家正雀 | |
紙切り | 林家正楽 | |
落語 | 春風亭小はん | 親子酒 |
落語 | 柳家喬の字 | 紙入れ |
奇術 |
松旭斉美登 美智 |
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落語 | 柳家一九 | 片棒 |
落語 | 金原亭馬生 | 不精床 |
太神楽 | 鏡味仙三郎社中 | |
落語 | 柳家小満ん | 居残り佐平次 |
落語 | 柳家寿伴 | 真田小僧 |
落語 | 柳家緑太 | やかん |
俗曲 | 林家あずみ | |
落語 | 入船亭扇辰 | 田能久 |
落語 | 台所おさん | 芋俵 |
漫才 | ホームラン | |
落語 | 古今亭菊志ん | |
落語 | 三遊亭吉窓 | 山号寺号 |
奇術 | アサダ二世 | |
落語 | 林家鉄平 | 代書 |
落語 | 柳家小さん | 二人旅 |
落語 | 柳家緑君 | 権助魚 |
漫才 |
金魚 |
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落語 | 柳家禽大夫 | 元犬 |
落語 | 三遊亭円丈 | 漫談 |
太神楽 | 翁家社中 | |
落語 | 柳家花緑 | おせつ徳三郎 |