■小鍛冶(コカジ)のこと
なにか小鍛冶について書こう。そう思い立ったのはいつのことであったであろう。私は小鍛冶について書かねばならない、今はそんな使命感だけが私の脳裏を埋め尽くしてる。いや、この表現は正確ではない、私は何らか、ブログの記事を書かねばならない、そして、適切なテーマが、何故か小鍛冶の三文字しか思い浮かばない、そういった方が正確かもしれない。
小鍛冶は能の演目のひとつで、作者は不明。10世紀後半頃の刀匠、三条小鍛冶宗近の伝説に基づいたストーリー。一条帝より剣を打つように勅命を受けた宗近が、自分と同等の技量の相槌を勤めるものがいないと、一度は断るものの、稲荷明神に助けを求めにいくと不思議な少年に出会い、相槌を勤めると言って消えていく。家に戻ると、稲荷明神の御神体が狐の精霊の姿で現れ、相槌を勤め、小狐丸という名刀が完成する、というお話。
能の五番立では、神、鬼、天狗が主人公となる五番目物(切能)に分類される。小鍛冶では主人公(シテ)は前半(前シテ)が少年(稲荷明神の化身)であり、後半(後シテ)が稲荷明神となる。また三条小鍛冶宗近はワキ(相手役)が勤める。
ところで、この小狐丸、伝説上のものだそうで、九条家が秘蔵していたが現在は所在不明、という情報がある。
さて、そんな小狐丸を打った宗近は、昨今の刀剣ブームの火付け役ともされる、三日月宗近の作者としても知られている。平安時代に打たれたこの刀は、現在イメージされる、刀身に縞と反りがある形のものとして、最も古いものだそうで、宗近自身がこうした形式の日本刀の最初期の名人であった、ということであろう。
現在、三日月宗近は、東京国立博物館に所蔵され、国宝に指定されているそうである。
その他、祇園祭の長刀鉾も、もとは宗近が娘の病気平癒のために、祇園社に奉納したものを使っていたそうである。
こんな記事を書くことを考えながら近所のスーパー三徳に、キリン午後の紅茶のミルクティーを求めにいったら、レジにCoGCa(コジカ)なる、案内が。見れば三徳の電子マネー、ポイントカードだそう。
偶然って恐ろしいですね(何がだ?)。
■もっと小鍛冶のこと
能には小書と呼ばれる特殊演出が存在する。小書なしの常の小鍛冶では、後シテは赤頭であるが、黒頭、白頭という小書が付くことによって、後シテの髪の色が変わるほか、白頭では前シテの稲荷明神の化身が、少年ではなくておじいさんになるという変化がある。能とは、一期一会の芸能であり、同じ演目であってもこうして小書が変化するうえ、シテ、ワキ、四拍子、狂言の役者の組み合わせを考えていくと、同じメンバー、演目、演出は二度とないと言ってよい。だから何だというわけではないが。