哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

ロジカル会話術のこと

■『マンガでわかる 必ず伝わる! ロジカル会話術(船川淳志、双葉社)』のこと

 ロジカル会話術に関する書籍を拝読したので、その中でこれはと思ったことを書いていきます。なお、あまり詳細に内容を書きすぎるのも申し訳ないので、私が注目した点を中心にお伝えし、不明な点は本書を紐解いていただければ、という気持ちでおります。

アブダクションのこと

 そもそもロジカル会話術とは何か、という点である。巷でロジカルシンキングクリティカルシンキング、と言った思考法が重要視されるようになってきたのは、本書によると20年ほど前から、とのことなので、2000年代に入った頃から、ということであろう。そういった思考法、ということで考えると、それは個人のスキルのように思われる。しかし、こういった論理的思考法を学び、実践していくことに加えて、そういった考えを会話の中で、相手に伝えて納得させていくことが大切である、ということが本書の主張である。

 これはもっともな話で、自分の職場を考えてみても、仕事ができる、尊敬できる相手というのは、きちんとみずから考えて、それを周囲に発信できる人物である。というか、それを発信して周りを動かせないと、その人がそうした論理的な考え方ができていることすらわからないので、やっていないのと同じことのように思われる。

 ところで、この論理的な思考の方法として、基本とされるのが演繹(ディダクション)と帰納(インダクション)であり、これは私も知っていた。本書ではアブダクション、というものが紹介されている。これはある問題に対して、仮説を立てて、検証する方法だという。確かにビジネス上の課題に対して、それを演繹的になんらかのルールに当てはめて考えること、帰納的に事例を積み上げて考えることもあるが、それ以上に、こうではないかと仮説を立てて、それらしいものからつぶしていく、ということはよくあることである。川喜田二郎氏のKJ法アブダクションである、とのことである。

 こうした論理的思考を使った上で、その考えを周囲に納得させていくのが、ロジカル会話術である、とのことである。 

●PREPのこと

 ビジネスにおける文章や会話の基本がこのPREPであるという。これは何だか聞いたことがあった気がするのだが、どうにも忘れていて、再認識した。結論(Point)→理由(Reason)→事例(Example)→結論(Point)の順番で話を展開すると良い、というものである。

 一般的に文章術と言うと、起承転結という構造を想像されると思う。しかし、ビジネスにおいては、結論の前提となる、起承の部分をきちんと脱線せずに説明したうえで、相手がきちんと話を聞いてくれる時間があるのか、という問題がある。そのため、まず結論を伝えて、その理由と具体例を説明したうえで、再度結論を繰り返すと良いのだという。

 その順序を意識したうえで、筆者は抽象のハシゴを上がったり下がったりしながら、共通認識を得ると良い、としている。具体的な前提を確認するために、抽象度を下げて、「具体的に」「例えば」と言った事例を挙げたり、反対に抽象度を上げてまとめるために「つまり」「まとめると」といった、コミュニケーションをとることが大事なのだ。

 こうしたPREP(結理事結)のことは、知っていてもいざその場でできていない、ということをこのところ痛切に感じている。こういった意識で、会話の前に一度自分の中で整理をつけながら、伝わりやすい話し方を意識したい。

MECEのこと

 これも私は名前だけは知っている。モレなく、ダブりなく、という意味である。本書の中ではファミレスのバイトの抱える問題について、個人の問題か店の問題か、長期的か短期的か、の2×2のマトリックスを作ってモレもダブりもなく、分析している。

 こうして分けると分かるようになる、その理屈は分かるのだが、その中でカギとなる「切り口」が分からない。例えば経営資源だと、ヒト、モノ、カネ、情報で、分けるのだという。他にマーケティングの4つのPや、戦略策定の3つのC等、というか、ロジカルシンキング? 経営学? このあたりの業界には何故、こんなに怪しげなカタカナとアルファベットが満ちているのだろうか。

 それはともかく、こうしてモレなくダブりなく分けることによって、その中で力を入れるべきところが見えてくる。何とか活用する方法を探りたいところである。

●詭弁・強弁

 これはこうして書籍で主張されているのを初めて目にして、ああ、わかると、ひどく共感をした個所である。つまり本来論理的に話し合うべき場において、こうした手法で自分の意見を通そうとする人がいるから気を付けよう、ということである。

 詭弁は相手の意見や立場を矮小化したり、論点をすり替えたりすることだ。例えば詭弁においてよくあるフレーズは「君のために言っている」「本末転倒である」「レベルが違う」「成功すると保証できるのか」等である。こうしたフレーズが出てきたり、そもそもの論点がズレてきているようであれば、一度立ち止まって、自分から相手に疑問・質問をぶつけて、確認をすることが必要だそうだ。

 また強弁は「しょせん●●ごときに」「100%成功できないならダメだ」と言った強い言葉や態度で、相手の言葉を否定しようとする言動である。これに対しては、一度冷静に相手の言葉を受け止めたうえで、確かに~~ですが、しかし~~、という形でわかりやすい理論で反論していくのが良いのだという。

 詭弁・強弁に関しては、こういうケースが職場でよくあるなあ、と思って、大変参考になったので、是非、実践で使ってみたいものである。

■参考図書

 今回は下記書籍の感想と自らの備忘録として、論理手法、PREP、MECE、詭弁や強弁について説明してきた。本書にはその他にも、相手から意見を引き出す相槌の打ち方や、創造的ブレストの方法など、仕事や日常において役に立ちそうな知識が詰まっていた。ご興味を持たれたら是非、ご一読してほしい。

マンガでわかる 必ず伝わる! ロジカル会話術 (Futaba Culture Comic Series)

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