哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

ステイホームのこと②

■ステイホームでできる10のこと

 今日、歩いていてふと思ったことがある。所得が30万の人と、60万の人がいた時、昨今のコロナによる経済の縮小に伴い、減給されるとしたら、①同率、例えば20%減で24万・48 万とするのが良いのか、②同額、例えば9万減で21万(30%減)・51万(15%減)とするか、③富める人から多くとって、27万(10%減)・45万(25%減)とするか、色々な選択肢があるなかで、私は無意識に、③が良いのじゃないか、と思っており、それで一つは私が意外と、資本主義・自由経済を信じていないんだな、ということを感じた。

 加えて、多くもらっていればそれだけ大きく削られても、生活していけるのではと考えていくと、しかし家賃の様な固定費が支出の大きな割合を占めているのだとすると、いかに収入の数字が大きくとも、ある割合以上の減給は生活を破綻させる、と思った。

 なおも考えると、この高給取りのエンゲル係数が高ければ、良いのである。もともとの支出に占める食費の割合が十分に大きければ、家賃などの固定費と異なり、所得が大きくかつエンゲル係数が大きい人の食費は変動費の割合が大きいはずであるので、そうか食費云々ではなく、変動費の大きな人からとれば公平性はともかく、破綻することはないのか、などと訳の分からないことを考えるのを防ぐために、おうち時間をすごすのに適したコンテンツがたくさんあったので、下記の通りに紹介するものである。

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1.江戸東京博物館「webで博物館を見てみよう」

江戸東京博物館 

webで博物館を見てみよう

 江戸東京博物館は両国にある施設で、総武線両国駅からも見える巨大な建物と、長いエスカレーターが特徴であるが、何故かそのエスカレーターまでも体験できるのが、上記のVRである。見ていただくと分かる通り、資料の展示だけではなく、各所に模型等で、江戸や近代の東京の建物や暮らしが再現されており、そうした展示を眼下に臨みつつ、木製の日本橋を渡りながら博物館に入館する順路となっている。

 このVRではそうした常設展の全てを体験できるほか、縮小模型の中の人視点で、その模型を鑑賞できるので、江戸城の松の廊下や能舞台、明治期の銀座の通り等をリアルに感じることができて面白かった。

 つい昨年、友人が誘ってくれて訪れたのを含め、恐らく片手で数えるほどしか入館していないのだが、その特徴的な展示はこうしてVRで観るだけでもわくわくする。

2.国立科学博物館「おうちで体験!かはくVR

国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo

おうちで体験!かはくVR -国立科学博物館-

 江戸博は(私の幼少期にオープンしたはずなのだが、)数度しか訪れておらず、じゃあ私は子どものころ、どこを好んで訪れていたかと言うと、こちらの上野にある国立科学博物館(と佐倉の国立歴史民俗博物館)である。

 かはくは見ての通り、動物の死骸、もとい、剥製や恐竜の化石など、子ども心にロマンを感じるものが多く展示されており、両親や親せきに連れられて、何度も足を運んだ覚えがある。なかでも数年前に他界した大おばに「 ふしぎ大陸 南極展 」に連れて行ってもらったことは、印象に残っている。

 その大おばは、私自身が体調を崩していたり、仕事が多忙であったりした時期と、彼女が年のせいか受け答えが少しずれてきた時期とが重なって、ある日突然、死んでしまった。今思うともっと話しておくべきだったし、新型コロナウイルスが蔓延して、身近な人がある日突然消えてしまってもおかしくない現状の中で、そのことはより一層、私の心の閊えとなっている気がする。

3.ルーヴル美術館「Experience Louvre Museum in Virtual Reality.」

ルーヴル美術館

Experience Louvre Museum in Virtual Reality.

 ひょっとして、この手のVRは私が過去に行ったことがあって、それを懐かしんで楽しんでいるだけではないか、という指摘は鋭い。しかし見たまえ。私は一度も訪れたことのない、フランスのルーヴル美術館VRも、楽しく見ることができる。『ダ・ヴィンチ・コード』等で登場する、表のピラミッドが、まさにルーヴルだと感じるし、唐突に「 モナ・リザ 」がいるのも、さすがルーヴルである。

4.ヴァチカン美術館「Virtual tours」

Vatican Museums – Official Website

Virtual tours

 とはいえ、ルーヴルでさえ、おお、これがあのルーヴルか、という、何が”あの”なのだかよくわからないが、なんとなく馴染みがあるように錯覚して、それで楽しいのかもしれない。

 そこで知らないところ知らないところと探して、これは知らんとこだろうと思って観たら、システィーナ礼拝堂だった。聞いたことあるだけだが。

 ルーブルもこちらも、日本の美術館とはスケールが違う。日本の美術館・博物館が、観者と対象物(展示品)を隔て、また観者→対象という一方通行の意識の流れを生むのに対して、それらはただ観者の日常の中に、ぽんと対象物が現れて、両者が互いに影響しあっているような、観者と対象とが同じ世界の中で呼吸をしているような印象を受ける。VRを見ていて、是非これらの海外の美術館にも行ってみたい、と思う次第である。

5.the能ドットコム「国立能楽堂Virtualフォトツアー」

the能ドットコム:「能」入門・解説・資料など能楽の総合情報サイト

国立能楽堂[Virtual]フォトツアー

 ところで、私がよく参照している the能ドットコム にも、国立能楽堂のヴァーチャル画像があることを思い出した。前の4つと比べれば貧弱であるが、よく目にしている能楽堂の内部をしげしげと眺めるのには便利な趣向である。

6.おうち遊園地「よみうりランド人気No.1コースター 「バンデット」」


【おうち遊園地】よみうりランド人気No.1コースター 「バンデット」

 ここからはYoutube動画である。ある友人のお子様のお気に入りと聞き見てみた、おうち遊園地のジェットコースターの動画。怖い……、想像以上にリアルである。映像を見ているだけなのに、下腹部の辺りに妙な浮遊感がある。もうやめよう。

7.HORSERACINGSCHOOL「騎手課程35期生第3回模擬レース戸崎圭太騎手ヘルメットカメラ」

 HORSERACINGSCHOOL YouTube


騎手課程35期生 第3回模擬レース 戸崎 圭太騎手 ヘルメットカメラ

 と思って、ジェットコースターの映像はもう見れないので、何か別のものがないのか探していたら、こんなものがあった。実際の競馬のレースではなく、競馬の騎手になろうという競馬学校の生徒と、プロのジョッキーが入り混じっての模擬レースの模様である。騎手の頭部にカメラが付いているようで、実際に馬に乗って、他馬を追いかけたり併走する様を見ることができる。

 ジェットコースターの様な怖さはない。馬に乗っている人は原則的に落ちないからだ。少なくともジェットコースターのように、落ちることを想定した走路設計はなされていない。

8.金春流能楽師山井綱雄「有名な『高砂や〜』を謡ってみよう!」 

金春流能楽師山井 綱雄 tsunao yamai - YouTube


【8分でマスター!】有名な『高砂や〜』を謡ってみよう!

 なにもおうち時間を楽しむ動画は、大きな動きのあるものとは限らない。能の謡の稽古を動画を通して体験できるコンテンツもある。上の動画では、結婚式等のおめでたい席でおなじみの、高砂や〜の謡を学ぶことができる。

 能に限らず、YouTubeを漁ると、たくさんの習い事・お稽古を動画で体験できる。私はヨガ(ストレッチ・筋トレ)やウクレレの動画を見ながら、実践してみている。

 なかなか時間が取れない日常の中で、こうして集中的に新しいことを学ぶことができるのは、ありがたい限りである。

9.哲学講義「ステイホームのこと①」 

philosophie.hatenablog.com

 家ですごす時間に、ブログを読むというのはいかがであろうか。上記のブログは過去2年分ほど、筆者が毎週書き続けた文章が掲載されているため、分量が多くておすすめである。 

10.Your HOME

 ここまで読んだあなたは、パソコンから目を話して辺りを見回す。

 あなたは在宅勤務中で、薄暗い自室に一人きり、家族はスーパーに食事を買いに行っていて、不在だ。自室を出て、台所に行き、グラスに綾鷹を注いで、部屋に戻ってくる。

 職場の上司から連絡がないかメールを確認するが、受信メールはない。げっ歯類が歯を削るための、かじり木を製造する大手メーカーに勤めるあなたは、ハツカネズミに似た上司の顔を思い出そうとするが、上手く思い出せなかった。もう一か月、在宅勤務が始まってから過ぎ去ってしまった。失われた一か月、この一か月、かじり木の流通がストップした影響で、歯が伸びすぎてしまったげっ歯類がいないか、不安がよぎるが、この情勢で仕事に出ることもかなわないので、あきらめるしかない。

 そもそも、あなたに上司なんていたのだろうか。上司のねちねちしたしゃべり方さえ、あなたの想像の産物ではないのか。あるいは、今スーパーに買い物に出かけている家族と言うのは、本当に帰ってくるのだろうか。いや、本当にそんな人いたのだろうか。

 あなたは一日のほとんどを自室の白い壁紙におおわれてすごしている。その外の世界が本当にあったものなのか、この一か月に自分が想像したものなのか、はっきりしない。本当に新型コロナウイルスなど、蔓延しているのだろうか。すべてはあなたの妄想で、あなたが一か月引きこもっている間、街の経済は回り続け、かじり木は飛ぶように売れ、げっ歯類たちは活発に歯を削り続けているのではないのか。

 いや、そちらの方がもっともらしい。一か月たったこと、5月の大型連休がその間に過ぎ去ったことなど、きわめて疑わしい……。

 そう思っていると……、ただいまあ、という声がする。

 玄関だ。

 再び飲み終わったグラスを片手に、自室を出て玄関に向かうと、ウォルマートの袋を肩にかけた見知らぬ女が、親しげにあなたに微笑みかけていた。