哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

絵画等のこと①「帰ってきた!動物大行進」@千葉市美術館

千葉市美術館 のこと

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 1995年に開館し、今年で開館25周年を迎えた千葉市美術館が、2020年7月11日(土)にリニューアルオープンしたので、先日、行ってきた。館内のエレベータの中央、足元にソーシャルディスタンスのシールが貼られており、美術館ならではでお洒落である。

 これまでは千葉市中央区役所と同じビルに同居していたが、区役所が近所のきぼーる(Qiball)にお引越ししてしまったため、1棟すべてが美術館施設となったのである。千葉市美術館の建物は、1927年に設立された旧川崎銀行千葉支店の建築を包み込むように設計されている。入口から「さや堂ホール」と名づけられた美術館のエントランスに入ると、当時の銀行建築を偲ぶことができる。

 さや堂ホールは、これまで何もない空間で、企画展示の内容によっては展示スペースとして使われていたけれど、あまり活用されている印象はなかった。今回、こちらがエントランスとなったことで、葛飾北斎の神奈川沖浪裏をモチーフに、所定の場所で来館者がジャンプすると、跳んだ高さ? に従って波が大きくなったり小さくなったりする、謎のハイテク機器が導入されていたり、見返り美人が見返り続けてぎゅりゅんぎゅりゅん回っていたりと、面白空間化して大変良いことである。

●帰ってきた!動物大行進のこと

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 ということで、現在開催中の企画展示は、「帰ってきた!動物大行進」である。千葉市美術館では8年前の夏、「どうぶつ大行進」展を開催したそうである。館内を動物の姿を探して人々がまさに大行進、大いにお楽しみいただいた、とのことであり、私も確かに鑑賞した気はするのだけれど、その内容が定かではない。まあ覚えいていないものは、仕方がない。

 いろいろな動物たちが登場して、楽しい展示である。新型コロナウイルス感染症蔓延の世情を反映して、展示の冒頭には鐘馗が登場し、彼が玄宗皇帝の夢に現れ、マラリアに苦しむ皇帝を救ったことや、日本では天然痘除け等で信仰されていたことが説明され、その他疫病や災害に例えられる生き物が紹介される。コレラ/コロリ/虎烈刺を現す虎や、地震の原因とされた鯰等。こうした災厄を生き物に例えるということは、古来の日本人の感性が、そうした悪いものを根絶やしにするのではなく、共存するものと見ていたのかもしれないとかなんとか、そんな解説が書かれていた。

 この展示で私が勉強になったと、一番印象に残っているのは、馬上から人間がずり落ちている絵の解説にあった、馬から滑り落ちていたら、僧正遍照で間違いなし、というものである。「名にめでて 折れる許りぞ 女郎花 我おちにきと 人にかたるな(古今和歌集」の和歌にちなむとのこと。僧正遍照=馬から落ちた人、と覚えておこう。

 目玉作品のひとつ、「王者の瑞」を描いた石井林響は千葉県山武郡土気本郷町(現千葉市)出身の画家。伝説上の生き物麒麟を、動物のキリンの剥製を元に描いたそうで、大分キリンに寄っているように見受けられる。今年のNHK大河ドラマ明智光秀を主人公とした「麒麟がくる」であるが、こんなやつが来たら、ちょっと嫌だ。

 三代広重による「女官養蚕之圖」より、明治天皇太后により宮中での養蚕が復活せられ、現在も皇后陛下を中心に行われていることを知る。千葉から奄美に移り住んだ、田中一村アカショウビンを自身を投影して描いたことも初めて知ったし、能の題材ともなる、鵜飼を画題とした作品も面白く見た。タイガー立石による「封函虎」では、マッチが虎に変化する不思議な世界に熱狂した。

 総じて、良い展示であったと思う。

●作りかけラボ01~遠藤幹子おはなしこうえん~ のこと

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 今回のリニューアルにより増設された、子ども向けアトリエである。

 ダンボールでちょっとずつセットを作って、その場で来館者が表現を楽しむことができるという趣向のようで、拝見したときは「羽衣」を題材にしたセットが、作りかけで置かれていた。

 この新型コロナウイルス感染症の全盛期に、なかなか厳しい企画であるとは思うが、それでも面白い試みだと感じる。

千葉市美術館コレクション名品選2020 のこと

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 もう一つ、リニューアルに際しては、ダイジェストで所蔵品を楽しむことができる常設展示が増えた。地元稲毛を描いた作品等、多くが写真撮影も可能である。

 また、撮影不可であったが、現在は、草間彌生の作品を特集して展示している。常設展示も時期により展示替えするようなので、楽しみである。

 エントランスや常設展示等、展示スペースが増えた千葉市美術館、個人的にはリニューアル前のこじんまりした中でも、十分見ごたえがありヘトヘトになりながら鑑賞していたので、これ以上ボリュームが増えるのは恐れ多いが、それでも今後が楽しみな施設である。

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