哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

2022年2月の徒然なること

■2022年2月の徒然なること

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かもめブックス(東京都新宿区)

 プリンは美味しかったがややサイズが小さかった……。

●第41回青葉能「羽衣」他 @青葉の森公園芸術文化ホール のこと

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 千葉県千葉市にある青葉の森公園芸術文化ホールにて2022年2月13日に開催された、第41回青葉能を拝見した。同ホールはいわゆる地方都市のホールでありながら組立式の能舞台を有し、毎年この時期は能舞台weekとして能や狂言のイベントや能舞台にて落語や朗読のイベントを行う、という催しが開かれるのである。中でもこの青葉能はその目玉企画である。

 当日の演目は素謡「翁」、仕舞「高砂」、狂言「昆布売」に続いて能「羽衣」。おめでたい演目が中心である。公演に先立ち、前年の10月にはシテ方金春流の山井綱雄さん、1月には同流の柏崎真由子さんによる事前講座があり、そちらにも参加した上で公演拝見した。上演の演目「羽衣」の詞章やあらすじを、解説や体験を通して勉強していたため、話についていくことができて(、特に型の体験で七宝充満の宝を降らしを習っていたので、あー、教わったところだーっ! と興奮して拝見し)、たいへん楽しむことができた。

 当日、プレレクチャーで山井さんがお話なさっていたが、同日のシテ(主役)をつとめた前宗家(家元)の金春安明さんの謡は美しく低音が響き、その響きはまた同流の特徴でもあるとのこと。その説明の通り、大変深みのあるお声の謡で、素晴らしかった。

 ただし、私としてはもう少し動きのある曲のほうが好きだな、というのが正直なところで、まだまだ能楽を深いところで理解できておらず、「船弁慶」や「石橋」等の派手な曲が好きなのである。また能舞台を二階から見下ろす席というのも、能面の表情や舞の動きが見にくいので、私としてはやはり能は舞台と同じ高さで拝見するほうが好きだな、と感じた。 

www.cbs.or.jp

●2022年1月22日 金春円満井会定例能第3部「百万」他 @矢来能楽堂 のこと

 百万は以前に(2019年11月16日 金春円満井会定例能(シテ:村岡聖美さん)にて)、拝見したことがあったのにとんと覚えがなかった。

 矢来能楽堂の金春円満井会定例能では、狂言八幡前」と能「百万」を拝見した。狂言には人間国宝野村万作さん(萬斎さんの父)が出演されていて、90歳というお年にも関わらずハリのあるお声で、納得の存在感。ある娘の婿に立候補すべく、何某に芸を習いに行くも、教えられたことがうまくできず、何某からも愛想を尽かされ、恥をかくという話。

 能は子と離れ離れになってしまい、センシティブになってしまった母の物語。仏に捧げる念仏や舞を柏崎真由子さんが迫真の演技で披露されていて、楽しんだ。生き別れた母と再会しても、なかなか名乗り出ない子供というのが謎。舞台の嵯峨清凉寺はかつて源融の屋敷があった場所で、嵯峨大念佛狂言(国の重要無形民俗文化財)が行われている。源融は能「融」にも描かれているが、『源氏物語』の光源氏のモデルとされる人物。

●絵画等のこと5.02「苔松苔梅 春を寿ぐうめのきごけ」@千葉県立中央博物館 のこと

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 千葉県立中央博物館(千葉県千葉市)で開催中の「苔松苔梅 春を寿ぐうめのきごけ」を拝見した。

 日本文化(立花・絵画・着物・鏡板)に描かれた、苔松苔梅を導入に、松や梅に生える苔について具体の話に入っていくという展開で大変わかりやすい。鏡板特集では日本全国の能楽堂の鏡板(能舞台の背景に松が描かれたあれである)を一挙に展示。20〜30程の鏡板の松を見比べるという機会はあまりなく、面白い経験である。それぞれ松の幹の部分に苔が生えている。松の形は似通っているのに、苔は様々である点も見どころだそう。
 また多くの方は、リトマス試験紙を小中学生の理科の時間に使ったことがあると思う。溶液の酸性やアルカリ性を調べるのに使われる。実はリトマス苔という苔からできているのだそう。元々は彼らのその変色する特性を活かして、染料として使われていたそうで、アンモニアに漬けて赤紫色の染色に使うそう。古来、紫色に染めるのは難しかった(だからこそ、貴重な紫色は高貴な色として大切にされた)そうで、この特性に気がついた一家が染色で一財産を築いたのだそう。
 また日を改めて、本展に関連したギャラリートーク(ゲスト:シテ方金春流能楽師中村昌弘さん×学芸員坂田歩美さんの対談)を拝見した。
 坂田さんのご専門は苔と言っても、青々とふかふかして水辺にいるあいつではなく、梅や松の幹についた薄緑色のびらびらしたあいつだそう。これが能舞台を始めとした日本画に描かれる松にも生やされることから、今回の対談に至ったようで、大変勉強になった。
 これらの"うめのきごけ"は地衣類と言って、藻類と共生する菌類の仲間なのだそう。苔が菌類というと、不思議な感じを受けるが、一般的に苔という呼称が指し示す範囲が広く、あおあおふさふさのあいつは蘚苔類と呼び、木の幹にごわごわしているあいつを地衣類と呼ぶのだそう。ふーん。

 

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