■2022年3月の徒然なること
カフェ・タピロス(東京都港区)
新型コロナウイルス感染症への対策で、完璧にマスクを着用しているというのに、今年は花粉症が酷い……。鼻水や目の痒みに加え、喉の奥や果ては耳の奥までが、痒いように思われる。つらい……。
●絵画等のこと6.01「山本大貴 - Dignity of Realism -」@千葉県立美術館
千葉県立中央博物館に行った際、調子に乗って千葉県立施設の各館共通年間パスポートを作った。千葉の中央博物館の他、本八幡の現代産業科学館や勝浦の海の博物館等、色々な施設の常設展が観られるそう。千葉みなとの県立美術館も拝見できるため、もはや行くしかないので行ってきた。
千葉県出身の写実人物画家である、山本大貴の個展。SFチックなガジェットやアンティーク調のドレスを纏った女性、バレエダンサーの姿を、写真のような正確さの油絵で描く。
絵を観ているのに本物の人物がそこにいて、見つめ返してきているような不思議な感覚を抱く。またその中の人々だれもが、ふと動き出して物語を紡ぎ出しそうにさえ感じられる。
これだけ写実的であるならば、写真でいいような気がしてくる。そこにあったものを、そこにあったように描くことができるのだから。しかし、はたと気がついた。これだけ写実的であるからこそ、そこになかったものさえも、そこにあったように描くことができるのだ、と。
●Marie-jose MEDEVIELLE 展「~縁 想 絆~」 @ストライプハウスギャラリー での「フランス語による能楽と小鼓の話」のこと
六本木のストライプハウスギャラリーにて開催されていた、Marie-jose MEDEVIELLE(マリージョゼ・メドゥビエル)展「~縁 想 絆~」(2022年2月15日(火)~28日(月))の会場にて開催されたイベントを拝見してきた。
本展示は2021年に他界した、5弦ウッドベース奏者水野俊介の追悼のため、彼の音楽から想起された染め物や和紙の船を組み合わせた空間展示である。併せて能「海人」からもインスピレーションを受けたそうで、海や水のイメージを感じさせる作品であった。作家は音楽を聴くと色のイメージが見える、とのこと。私にはわからない感覚だけれど、素晴らしい感性・能力だと思う。
今回のイベントでは作家のフランス語の生徒でもあられる、小鼓方観世流能楽師の岡本はる奈がフランス語と日本語で、小鼓や能楽について説明、さらに能「海人」の聞き所(玉の段)を一調という(小)鼓と謡で演じる形式で披露。美術作品の中という不思議な空間での演奏を広くはない会場で間近に拝見するという、大変貴重な体験で面白く勉強になった。
フランス語による能楽と小鼓の話・一調「海人」
小鼓方観世流 岡本はる奈 小鼓草子2020
シテ方金春流 柏崎真由子 金春流能楽師 柏崎真由子参考:同じ二人による 一調『天鼓』 - YouTube
●千葉学講座(オンライン)のこと
鳩やぐら(東京都渋谷区)
千葉県立中央博物館にて催された「千葉学講座」のオンライン聴講(YouTube)を拝見した。家にいながら県内の現役研究者の関心事を拝見できるというのは、新型コロナウイルス感染症がまん延する現在だからこそ、とも言える。コロナは沢山の悪いものをもたらしたが、その中でこうしたオンラインイベント等の発達は良い点であると思う。こうしたリアルでは出向かないであろう物事に、私を出会わせてくれたから。
「千葉学講座」は、県内の博物館の研究員等が実施している調査研究活動の成果を、広く還元していくことを目的として開設しています。博物館職員と県民の方々が共に、この講座を通じて房総を再発見し、地域に立脚した新しいコミュニティづくりや地域の発展等に寄与したいと考えております。 千葉学講座 - 千葉の県立博物館
今回は5人の研究者が代わる代わる登場し、ご自身の研究について私のような素人にもわかりやすく説明してくださった。私は時間の都合で前半しか拝見できなかったのだが……、講演1「房総半島の多様な海鳥」 中央博物館・平田和彦研究員のお話はテンポよく、短い時間で日本の中での千葉県、そして千葉県の各所へと、どんな海鳥がどのようにやってくるのかを、楽しくわかりやすくご説明くださり、印象に残った。南米の方の海鳥とインドの方の海鳥が、千葉に渡ってきて同じフレームの写真に収まっている様子をご紹介くださり、海鳥凄いなと、生活圏のスケールが違うんだなと、感動した。
また講演2「千葉県における地衣類相調査」中央博物館 ・坂田歩美研究員には先日の博物館でのギャラリートークイベントでもお話を伺った。そのときは能舞台の鏡板に描かれたコケについて等、文化面に軸足をおいたお話だったが、今回はより地衣類(木の枝やコンクリートなどに発生するコケ)の調査実態について、よりご専門に引き寄せた内容をわかりやすく説明くださった。県内に分布する地衣類(300種〜)の分布場所を一つ一つ調べていくそうで、私にしたら途方も無い作業に思われる。研究者は凄い、自身の関心事に対する熱意や集中力がよほど高くないとなれないものだ、と尊敬した。