哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

2022年3月の読書のこと「マンガでわかる もしかしてアスペルガー!?」

■マンガでわかる もしかしてアスペルガー!? 〜大人の発達障害と向き合う~(司馬理英子/主婦の友社)のこと

他人を怒らせて困っている人のイラスト(男性会社員)

 アスペルガー症候群とは、ADHD注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)と同じく発達障害の一種で、社会性やコミュニケーションに問題を抱えるASD自閉症スペクトラム障害)に含まれる障害である。

 本書では漫画を通してアスペルガー症候群の特徴やそうした人と接するときに気をつけることについて紹介している。

●読んだこと

 本書では、アスペルガーの特徴として、普通がわからないといった社会性の障害、話したいことを一方的に話す等のコミュニケーションの障害、予定外のことに融通が利かないといったこだわりの強さ、を上げている。

 またさらにアスペルガーの主なタイプとして四分類を上げており、自分の感情を出すのが苦手な「受動型」、一方的かつストレートにコミュニケーションをし続けてしまう「積極奇異型」、周りを気にせず、一方で興味のあることへの集中力が非常に高い「孤立型」、そして孤立型が人づきあいやコミュニケーションをマニュアルとして学んだ結果、ていねいだけれど不自然になっている「形式ばった大仰な型」と整理している。

 例えばこうした特性をもつアスペルガーの人は仕事に支障が出たり、職場の人と馴染めなかったり、生きづらさを感じるそうである。仕事での支障という点では、例えば相手が何を望んでいるかわからないため報連相が苦手であったり、一つのことにこだわるため同時に複数の仕事を進行する、いわゆるマルチタスクが苦手であったりする。また、相手の考えていることがわからないため、恋愛や友人関係も困難を伴うほか、家事も優先順位をつけて進めることができなかったり、金銭管理ができなかったりと、家庭内でもトラブルが起きることもあるそう。なお配偶者等のアスペルガー症候群によって二次障害が起きることを、カサンドラ症候群というそうである。

 そうしたアスペルガーの特徴への対処法として、本書ではまず二つの「あ」、「あいさつ」と「あいづち」をあげている。どちらもコミュニケーションの基本であるからだ。あるいは、自分の長所と短所を知ることや、完璧を求めないこと、悩みを誰かに相談することが肝要だという。周囲に協力が仰げるようなら、指示を具体的に出してもらったり、口頭ではなくメモで指示をもらったり、先の見通しを一緒に立ててもらって不安にならないようにしてもらうことなども良いそうである。

●考えたこと

 私はアスペルガーである。本書を読んで思ったことは、それである。本書を読み始めたきっかけは、ある知人が自分はアスペルガーだと思う(診断を受けたわけではない)と言っていたためで、その人を理解するために読んだのだけれど、結構自分に当てはまることが多く、あ、私もじゃん、と思った次第である。

 とはいえ、私自身も医師の診断を受けたわけでもないし、また本書についていたチェックリストをやってみても、半分は当てはまらない程度なので、本当にこの障害の診断を受けて苦しんでいる人からすると、軽々しく自分もそうだというのは不適切かもしれない。

 ただ、本書で描かれていることの多くが私自身が体験したことと類似していた。例えばマルチタスクが苦手であること、これは私自身、複数の仕事を同時に走らせるのが苦手であるのでよくわかるし、また自分の気持ちを表現するのが苦手という点だって、本書で例示されていた嫌と言えない、断れない(例えば自分のキャパを越えた仕事を振られたときに適切にNOと言えない)等は私自身、当てはまると思っている(このところ、仕事と上司との人間関係にようやく慣れてきて、少しだけ言えるようになってきた)。

 私と、そうしたきちんと? アスペルガーであると診断されている人の違いは、多分程度の問題である。私はアスペルガーの特徴をいくつも有している、しかしその多くが軽度であるため社会生活に致命的な影響は出ていない(コミュニケーション不安から職場を二年もたずに退職したり、同じ理由で新しい職場でも部署を転々として、挙句の果てに病気で休職をしたが、それらはどれも致命的とまでは言えなかった)から、そうした診断も治療も療育も必要とせず、ただなんとなく生きづらさを感じながら生きている。そしてそのくらいの生きづらさを日々感じている人は、とても多いのではないか、と思う。

 本書ではアスペルガーの人が不安に感じたり、困惑しないように、具体的にメモに書いて指示を出す(何を、いくつ、いつまでに、等をはっきりさせてあげる)、分からないことで不安にならないように見通しを説明してあげる、強く叱らず褒めたり穏やかに説明する、身体に触らない等々、周囲が気をつけると良いことが示されている。しかしそれらは、アスペルガーでない人にとっても、ありがたい配慮なのではないかと思う。アスペルガーの人が生きやすい社会は、誰もが生きやすい社会であると思う。だからこれらの注意点は、アスペルガーに近い特徴を持つ職場の同僚にはもちろん、そうでない人にもこれらを活かしていきたいと思う。

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