哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

映画等のこと⑨2021年11月~2022年3月までの連ドラたち

■映画等のこと⑨2021年11月~2022年3月までの連ドラたち

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LAITIER(東京都渋谷区)

 最近(2021年11月~2022年3月頃に放送終了した作品)もたくさんの連続ドラマを見た。視聴したのは、「青天を衝け」(NHK・主演:吉沢亮)「恋せぬふたり」(NHK・主演:岸井ゆきの)「真犯人フラグ」(日本テレビ・主演:西島秀俊)、「相棒 Season20」(テレビ朝日・主演:水谷豊)「和田家の男たち」(テレビ朝日・主演:相葉雅紀)「ラジエーションハウスⅡ ~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ・主演:窪田正孝)「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ・主演:菅田将暉)「ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○」(フジテレビ・主演:黒木華)。以上の中から印象深い作品を紹介していく。

青天を衝けNHK・主演:吉沢亮

 2024年より一万円札の顔として採用される、渋沢栄一の生涯を描いた作品。現在の埼玉県深谷市、血洗島の農家(藍玉の生産と養蚕)に生まれた栄一が、尊王攘夷や倒幕を掲げて息巻いていると思ったら、幕府側である一橋慶喜(演:草彅剛)の家臣に見いだされ士族になり、幕臣として欧州を回っていたと思ったら大政奉還戊辰戦争で幕府が崩壊、帰国して経済人として成功を収めていく、と言った、いま振り返ってみると激動、多岐にわたる分野での活躍で、却って何をやったのかわかりにくい人。

 栄一や喜作(演:高良健吾)を取り立てた、平岡円四郎(演:堤真一)の口癖であった「おかしれぇ(おかしろい)」を栄一も連呼し、幕末から明治という新しい世の中に向けて突っ走っていく、躍動感あふれる大河ドラマであった。

恋せぬふたりNHK・主演:岸井ゆきの

 他人に恋愛感情を抱かないアロマンティック、他人に対して性的に惹かれないアセクシャルである、咲子(演:岸井ゆきの)と高橋(演:高橋一生)が恋愛関係抜きの家族を目指して、同居をするという話。

 そもそも現代の家族制度が男と女のくっつきあいを前提として作られている。だからこそ、同性パートナー制度の議論が出てきたりするし、咲子や高橋のような特性の持ち主は、なんで結婚しないのか、なぜパートナーを作らないのかと、詮索されたりもする。多分、昔よりはそうした傾向は良くなっている(結婚しないことが受け入れやられすくなっている)のだとは思うけれど、なくなったわけではなく、私自身無意識に恋愛して結婚するのが普通、それができていない自分自身は何かが足りていない、と言う感情を抱いている。

 ただし更に言うと、より昔、恋愛結婚はそもそも少数派、結婚は家と家の思惑に基づいたくっつきあいに過ぎなかった。その時代は、結婚相手に惚れるなんてことは、必要条件ではなかった(多分)。だから、一概に時代が下った方が良い世の中だとは言えないのではないかと思う。男女が恋愛の上に結ばれて家族になっていくと言う神話は、比較的新しい時代に作られた虚構なのである。

 併せて考えたいのは、恋愛関係なしの家族論。実はこれは世の中にたくさんいると思う。だって、結婚当初のような恋心はないけれど、子どもや生活のために離婚しない夫婦だって、たくさんいると思うから。本ドラマの二人が凄いのは、かつて好き同士であった二人が今は冷めたけれど一緒にいる、ではなく、いきなり恋愛感情抜きで家族になろうとしていることであって、それもありなんだろうなあと思う。家族がいて分担したほうが良いことはいくらでもあるので。

真犯人フラグ日本テレビ・主演:西島秀俊

 運送会社勤務の相良凌介(演:西島秀俊)の妻、娘、息子の失踪(炊飯器失踪)に端を発する騒動を描く。三人揃っての単純な失踪事件に思われた当初から、主人公凌介が世間から疑われ、怪しい人物が次々と登場し、凌介を支える友人や同僚、終いには家族の裏切りも発覚して、というストーリーで続きは気になるけれど、物語全体としてのプロットはない、というタイプのドラマ。

 私は見ていて、歌舞伎に似ていると感じた。『平家物語』の俊寛僧都を描いた能に「俊寛」というものがあって、これは流刑地から恩赦で許される仲間二人を見送り、一人孤島に取り残される俊寛の悲しみを描いた作品なのだけれど、それを近松門左衛門文楽・歌舞伎に翻案したのが「平家女護島」。俊寛の悲哀に加え、仲間と島の海女との恋愛が描かれ、終いには俊寛も追加で恩赦されるのに、自らの意志で居残る決断をする話になっており、もうめちゃくちゃだけれど、見どころの多い作品に進化してている。(実際、現代は見どころだけ上演する見取狂言での上演が多いように、)非常に多くの人物が登場し、サイドストーリーを走らせながら展開し、もはや結末はどうでも良いのが歌舞伎であり、本ドラマは秋元康が手掛けた現代版歌舞伎と言えるのではないか。

ミステリと言う勿れ(フジテレビ・主演:菅田将暉

 巻き込まれ体質で事件を解決してしまう大学生、久能整(演:菅田将暉)を描いた物語。後ろから三話目にファイナル、残り二話は時系列を戻して、アナザーストーリーを描く、という構成。面白かったが、伏線が回収され切っていない終わり方なので、原作漫画(作:田村由美)を読みます。

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