哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

絵画等のこと⑩特別展 鯨 @千葉県立中央博物館・昆虫館 Bar Species へ行ったこと

■絵画等のこと⑩特別展 鯨 @千葉県立中央博物館・昆虫館 Bar Species へ行ったこと







 

 千葉県立中央博物館にて令和4年9月25日(日)まで開催中の「令和4年度特別展 鯨」を拝見したり、四谷三丁目駅至近の「昆虫館Bar Species」さんに伺ったりと、生物に触れる機会が多くあった。そこんとこ、振り返りながら考えてみたい。

 上に載せた写真は、1・2枚目が千葉県立中央博物館で撮影したもの、3〜5枚目が昆虫館Bar Species にて撮影したものである。4枚目の写真を見てほしい。まるで人の顔のイラストのように見える背中を持つ虫は、ジンメンカメムシと呼ばれている。私は大抵の昆虫を苦手としている。彼らが出現すると、理屈ではなく生理的に引いてしまい、難儀する。しかしこうして標本にされた昆虫をしげしげと観察することは面白い。柄が綺麗だったり、面白かったり、あるいは形が興味深かったりするのだ。

 昆虫館Bar Species はこうした昆虫の標本を眺めながら、飲物や軽食をいただきつつ、店主の大島千幸博士の虫トークを聞くことができる、楽しい空間である。世界にはこれだけ不思議な形や柄の昆虫たちがいるのかと、とても楽しく拝見したし、何ならおつまみの一つとして提供されているコオロギも食べさせていただいた。エビの素揚げのような感じで、まるで嫌悪感はない。同店で仕入れている食用の昆虫は、生産工場で野菜を食べて育つため、臭みがなく食べやすいのだそう。野生のコオロギは雑食のため、味や風味が違うらしい。なお、同店の昆虫食はあくまでサブ、ほとんどのお酒や食事に昆虫は入っていないのでご安心を。無水チキンカレーは絶品である。

 コンセプトとしては博物館の展示を見ながら、お酒を傾ける、そんなイメージだそう。店主がカマキリの研究者でお話上手なので、昆虫について楽しく知ることができる。

 伺った話を紹介しよう。ものすごく硬くてカラフルな昆虫がいる。硬くて美味しくないから、天敵である鳥に食べられない。鳥は、カラフル=食べられない、として覚えてくれるらしい。そうすると他の昆虫で、そいつによく似たカラフルなやつが出てくると、そちらも鳥に襲われにくくなる。面白いのはこの因果が、硬いことを覚えてもらうためにカラフルになって、それを真似して別の昆虫もカラフルになって、ではないところである。たくさんの種類の昆虫たちの中で、硬くてカラフルな種類の個体は上のような事情で、鳥に襲われにくくなって数を増やした。別の昆虫もたまたまそのカラフルさんに似たバージョンが出現し、そのバージョンが生き延びた。それが進化の流れなのだという。こうありたいという一方向への進化ではなく、無数の方向に進化した結果、環境に適合した進化を遂げたものが生き残る、という理屈だ。面白い。

 そんな話を聞いたあとに、千葉県立中央博物館に「令和4年度特別展 鯨」を観に行った。写真2枚目には太古のクジラの姿が示されている。そう、彼らは元は四足で、陸から海へと住処を変えていったのだそう。それから後足にあたる部分がどんどん小さくなっていき、前足は胸びれになっていったのであろう。今もクジラやイルカの中に、先祖返りして後足のようなものがある個体がいるらしい。大きな犬、のような姿であったクジラが、まるで魚のような外見を得ていく過程でも、おそらく無数に進化をして、結果として水の中での生活に適した形に進化を遂げた個体が子孫を増やしたのだろうな、と想像できる。面白い。

 話はここから、卑小な問題へと転じる。仕事をしていると、色々とアイデアを出す機会が多くある。そうした時に何かを解決したり、達成したりするための、ありきたりな方向性のアイデアだけ出す必要はないのではないか、と思う。アイデアは、言い換えれば進むべき一歩は、無数の方向に開けていて良いのだと思う。その中から上手く適合したものが後の世で、進歩であり進化であると持て囃されれば良いのであって、今の時点でそれが進歩・進化になりうるかは、わからないのではないだろうか。

 生物の進化の話から、私はこんなことを考えた。皆さんもぜひ、博物館や昆虫館Bar Species に行って、なんやかやと発散型に色々なことを考えてみてはいかがだろうか。あなたの進化すべき方向性が見つかるかもしれない。

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