■キッチンポテトの「パック」のこと
仕事の合間の食事はこのところ、職場ご近所のお店で食べるようにしている。新型コロナウイルス感染症の拡大によって一時、外食を控えてお弁当を買って職場の中で食べていた時期もあったのだけれど、今年度に入ってから職場にいることが特に嫌になってしまったので、積極的に社外に出て、飲食店で食事をとるようにしている。
お弁当を購入するのも、職場ご近所のお店が多い。このところはそうしたご近所に、仕事上のお願い事を色々としていることもあり、そのお返しではないけれど地元のお店を意図的に使うようにしている、そんな理由ももちろんある。しかしそうでなくても、わざわざ職場のご近所以外から、お弁当を買って職場に向かったりなどはほとんどしない。千葉市の自宅から渋谷区の職場まで、わざわざ食料を運ぶ必要性が私にはあまり感じられない。その唯一ともいえる例外が上の写真だ。
千葉市の新検見川駅近くにある「キッチンポテト」はその昔、「ポパイ」という店名のサンドイッチ屋さんだった。調べてみるとその昔、千葉市の稲毛というところにあったサンドイッチ屋さん「ポパイ」の流れをくむお店だそうで、今は新検見川ポパイの従業員さんが引き継いで、屋号をキッチンポテトと変えて、サンドイッチを作り続けている。メニューの中にはポパイというサンドイッチもあり、こちらはポテトサラダと玉子のサンドイッチ。ボリュームもあり美味しい。
私のポパイ/キッチンポテトとの出会いは、30年程前に遡る。生まれて33年間この新検見川という土地に住んでいて、近くには現在101歳の母方の祖母が住んでいる。祖父が他界したのが18年程前なので、当時(30年前)は70歳前後の祖父母が住んでいたことになる。母と祖父母の家に朝食を取りに行った際だ、何度か祖父が自転車で出かけて、このポパイのサンドイッチを買ってきてくれた覚えがある。シンプルなハムとレタスのサンドイッチや缶詰のみかんと生クリームのサンドイッチ、それにたまごサンド、そのあたりが私の思い出の味である。
ポパイ/キッチンポテトのサンドイッチを自覚的に買い始めたのは、高校生の頃である。お昼のお弁当として、サンドイッチを買って持って行っていた。私は高校に馴染めなくて(こう書くと高校でだけ馴染めなかったようだが、中学校でも、大学でも、職場でも、どこにも馴染めていない)、高校は地元の新検見川から電車で三駅離れたところにあったのだけれど、地元のお店のサンドイッチが私を随分励ましてくれたことを覚えている。
その後、ポパイ/キッチンポテトの味が私をいかに励ましてくれるか、しばらく忘れていた気がする。この店のサンドイッチを頻繁に買って職場にまで持っていくようになったのは、この2〜3年のことだ。地元の味でいつでも食べられるし、と思っていてなかなか足が遠のいてしまっていた気がするけれど、地元の味だからこその安心感はすごい。写真の「パック」は5種類のサンドイッチの詰め合わせ、ちゃんと懐かしい、みかんと生クリームの「フルーツ」も入っている。
この2〜3年、ベッドと食卓だけの生活となってしまった祖母もよく、ここのサンドイッチを食べているらしい。母が買ってきたものを、お昼にヘルパーさんが出してくれるのだ。もっとも三角形のサンドイッチの半分も食べれば、お腹がいっぱいになってしまうようだが。
電車に乗って移動すると、どうしても地元と職場が地続きであることを忘れてしまう。ここ最近はお陰様で、職場のご近所が私にとっては安心できる第二の地元となりつつあるのだけれど、それまでは地元を離れて一人、孤独であったように思う。そんなときに地元を携えて職場に挑めるサンドイッチは貴重である。この味をいつまでも、楽しめますように。