哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

節分のこと

■節分のこと


 
 
鳩やぐら(東京都渋谷区)

 千駄ヶ谷の勤め先の近所にある、鳩やぐらという定食・居酒屋がある。近隣の将棋会館で対局中の棋士の注文を受け出前を行う、将棋めしとしても有名な店であるが、こちらで先週、節分メニューとしてイワシ料理が日替わりで供されていた。私は5日間の内仕事が休みであった火曜日(鰯生姜焼きだったそう)を除く4日間(蒲焼き、梅照焼き、ネギ塩焼き、山掛け)を制覇、日替わりでイワシ縛りのメニューを考えるのは大変だろうと思うのだが、毎回手を変え品……、は変えずに楽しませてくれた。付け合わせの鬼除け汁(豚汁やけんちん汁等の具だくさんの汁物に蒸し大豆を加えた料理だそうで、こちらでは粕汁に蒸し大豆を加えて供してくださった)も美味しかった。

 鰯については、何でも節分に柊の枝に鰯の頭を突き刺して飾り、鬼除けとする風習があるそうで、それにちなんだものとのこと。実際、その飾りに使った鰯の胴体を食べる地域も多いそうである。調べてみたところ、以下のようなものらしい。

「ひいらぎいわし(柊鰯)」は古くからの日本の風習として伝えられている節分の飾りです。「ひいらぎの枝」に焼いた「いわしの頭」を刺したものを指します。
「ひいらぎいわし」はただの飾りではなく、節分の鬼が嫌いな葉っぱである、尖ったトゲのあるひいらぎと、鬼が嫌がる臭いのいわしを組み合わせて飾ることで「鬼が家に入って来ないように」という魔除けの意味合いが含まれています。
ひいらぎいわしに使われる「いわし」は、腐りやすく、焼くことで臭いを出して魔除けをしていたことから「焼き嗅がし」が転じてやいかがし(焼嗅)」と呼ばれることもあります。
また、ひいらぎいわしは、いわしの頭の部分のみを飾るため、身の部分を節分の行事食として食べる地域も多くあります。特に西日本の一部の地域ではひいらぎいわしを飾ったあと、その日中にいわしを食べる風習が残っていますよ。

 ――節分の日に「ひいらぎいわし」を飾るのはなぜ?作り方や飾り方、おいしいレシピもご紹介|HANKYU FOOD おいしい読み物|フード|阪急百貨店公式通販 HANKYU FOOD 

 ところで節分とはなんであろうか。広義の節分は、立春立夏立秋立冬といった各季節の始まる日の前日、つまり季節と季節を分ける日のことである。その中で立春について、旧暦(太陰太陽暦)においては月の満ち欠けを基準とした元日とともに、立春も新しい一年の始まる日として認識されており、立春の前の節分は大晦日と同じく年越しの日であった。

 古来より季節の変わり目に邪気(鬼)が生じると信じられていたため、宮中でも追儺・鬼やらいの儀式(方相氏が鬼を退治するのだそう)が行われており、それが現在の「鬼は外、福は内」(地域によって鬼は(も)内等とバリエーションがあるそう。ところでこれを見ていてふと思い出したのだけれど、福内鬼外、というペンネームで浄瑠璃作者として活躍し「神霊矢口渡」等の作品を生み出した江戸中期の人物をご存知だろうか? 誰あろうエレキテルを発明したり、土用丑の日として鰻をセールスしたとも言われている、平賀源内である。余談である)の掛け声とともに豆を投げて鬼を追い払う、という風習に繋がる。豆については「鬼を追い払う=魔を滅することから、「魔滅」という字が当てられることがある。 ――実用日本語表現辞典 」という意味もあるそう。

 また、方相氏である。何が「また」なのか、と思われるだろうが、これ( 2022年7月の読書のこと )とかこれ( 『能・狂言の誕生』のこと )で方相氏について触れていて、結局よくわからないでいる。しかし日本の伝統文化や古来からの芸能を理解するために、重要なキーワードなのだろうな、というところで引き続き関心を持って調べていきたいところ。

 なお昨今の節分の風習に「恵方巻き」があり、これは節分の夜に恵方を向いて太巻きを丸かじりで無言で食すると願いが叶う、というもの。願いが叶うかどうかはともかく、風習としては近年、関西地方の企業のマーケティングが発祥のようで、せいぜい江戸期より古くは遡らない、比較的新しい伝統のようである。しかし、それはそれでこれまでになかった伝統を作り出して全国に広め、経済効果は驚異の約650億円(中日スポーツ・東京中日スポーツ) とされるほどになっていることは、ものすごい企画であると感心するものである。

 また余談だけれど、黒川能という山形県鶴岡市に伝わった、いわゆる能楽に属さない能楽がある。こちらが「王祇祭」という延年の行事を行う。ちなみにこの名称は昭和の戦後以降であり、もとは「正月の神事」・「旧例祭」と称し、俗称「豆腐祭(とうふまつり)」と呼んでいたそう。これも現在は2月1日・2日の開催だけれど、元々は2月1日〜4日にかけて行われたそうなので、年末(節分の前)から立春にかけて行われた行事なのだなと思う。

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