哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

Tokyo Opera Days 東京二期会オペラ劇場 ヴェルディ作曲オペラ「ドン・カルロ」のこと

■ Tokyo Opera Days 東京二期会オペラ劇場 ヴェルディ作曲オペラ「ドン・カルロ」のこと

 上野・東京文化会館で催された、Tokyo Opera Days 東京二期会オペラ劇場 ヴェルディ作曲オペラ「ドン・カルロ」を拝見したので、感想を記す。

 生でオペラを観るのは初めてであった。

 ドン・カルロ(樋口達哉)はスペインの王子である。許婚であるフランスの王女エリザベッタ(竹多倫子)と惹かれ合うが、何故かエリザベッタはカルロの父でスペイン王のフィリッポ二世(ジョン・ハオ)と結婚することになる。

 この後、作中の八割方でカルロはエリザベッタ、エリザベッタと悲嘆に暮れる。義理の母のことを愛している由、カルロの親友で王の腹心であるロドリーゴ(小林啓倫)に打ち明ける。ロドリゲスからフランドルに行き、そこの民衆を統治するように勧められる。ロナウジーニョのはからいでエリザベッタと対面したりするが、カルロがエリザベッタに想いを寄せることを、エリザベッタの女官であるエボリ公女(清水華澄)に知られてしまい修羅場となる。どう考えてもロベルト・カルロスの仲介ミスである。

 フィリッポと一夜をともにし、エリザベッタがカルロの肖像画を大事にしていることを告げ口する、エボリ公女。もはや誰が誰に想いを寄せてどう嫉妬しているのかがカオスである。フランドルの民を連れて押し寄せて、ロベルト・バッジョにとらえられるカルロ。

 この色恋沙汰の中にしばしば王より偉い宗教裁判長(狩野賢一)が出てきていて、ロッシーニを狙っていることをほのめかしている。宗教と政治、統治と自由がテーマである、多分。カルロの牢を訪ねて、自分が全て罪を被ったことを告げるロートレアモン。すぐに宗教裁判長の刺客がロビンソンを殺害。カルロ釈放を求める民衆がなだれ込み、カルロは姿を消す。

 エリザベッタへの想いを収め、フランドルの統治へと向かう決心をしたカルロとエリザベッタは、天上での再会を誓い合って別れる。めでたしめでたし、という筋書き。

 ロドリーゴの名前が私の頭から度々飛んだ。あれ? ロドリゲスだっけ? ロナウジーニョだっけ? と。でもロドリーゴの小林啓倫の歌が一番好みであった。深みのある良い声であった。

 舞台セットはオペラということで華やかなものを想像していたのだけれど、大きな壁とベッド、吊られた雲、あと三階建てアパートのハリボテみたいなやつ。シンプルであった。知人からは能を見慣れている身にとっては十分豪華と聞いていて、なるほどシンプル故に色々と想像の余地はあった。あ、いまフォンテーヌブローの森なのだなとか、背景を想像できた。能や落語に親しむと無敵であることがわかった。

 私のように詳しくなくても、プログラムであらすじを読んでおけば、ちゃんと日本語訳の字幕も出るのでお話は理解できるし、生の歌唱、演奏の音の深みや圧を感じられて、楽しむことができた。カーテンコール撮影可も思い出になってよい。正面四階席の一列目、遠いけれど遮るものがなく見やすかった。ネックは四時間十五分という上演時間の長さと、一万四千円(B席)という入場料金の高さであろうか。

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