哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

郊外の地衣類のこと

■郊外の地衣類のこと



1~3枚目:いちはらクオードの森にて・4枚目:五井駅

 2023年11月26日(日)、千葉県立中央博物館が主催する地衣類の観察会「郊外の地衣類」に参加してきたので感想を記す。

 そもそも地衣類とは何であろうか。地衣類の和名にはコケとつくものが多い。だからといって水辺に青々と茂るふさふさのあいつらを思い浮かべると痛い目を見る(別に痛い目は見ないかもしれない)。そうしたいわゆるコケ・蘚苔類と同様にコケと呼ばれてはいるが、蘚苔類がれっきとした植物の仲間であるのに対して、地衣類は菌類の仲間である。
 菌の中に共生藻と呼ばれる藻類が入り込んだものが地衣類であり、菌類なのでカビやキノコの仲間であるそうだ。ただ共生藻が光合成をするお陰で、他の菌類のように外から栄養を獲り込む必要がないとか。
 意味不明である。
 光合成をおこなう植物ですら、地中の水分から栄養を摂り込んでいると思うのだけれど、そうしたものも摂り込んでいないのだろうか? いないのだろうな、多分。案内してくれた先生が地衣類のへばりついた木から栄養摂ってないと言っていた気がする、たしか。
 地衣類についての正確な説明は、千葉県立中央博物館地衣類って何?TOP 等で確認してほしい。

 さてそんな地衣類の観察会が開かれたのは、JR総武線の終点千葉駅から、十五分程電車に揺られた五井駅から、六十分程電車に揺られた月崎駅から、十五分程歩いたところにある、いちはらクオードの森 である。旅である。私の住まい致すチーバくんの喉元から、会場であるチーバくんの脇腹まで、同じ千葉県といえども片道二時間以上かかる。おまけに五井駅から月崎駅をつなぐ小湊鉄道は、一時間に一本程度しか運行がないのである。

 さてそんな遠出をしてまで、観察会に参加する理由は何だろうか。実は私は昨年の同時期の観察会に続いて、二回目の参加である。
 地衣類は空気のきれいなところに生息しているらしい。そのためそもそも私の普段の生活ではあまり目にしていないのかとも思うけれど、とはいえ目にしても気にも留めないと思う。観察会はそうした気にも留めないところに大きな世界が広がっていることを教えてくれる。
 地衣類は裂芽という突起や、パスチュールという中が空洞のふくらみ、粉芽塊や子器といった地衣類の増殖に関連する部位がある。これらを先生が説明してくれるのでなるほどと聞いてルーペで見てみるのだけれど、いまいちよくわからないことも多い。ただ、地衣類の身体にそんな構造が、肉眼で見えないところに複雑な仕組みが広がっているというのは面白いことである。
 粉芽塊からは粉芽が風に乗って飛び出す。これには菌類と藻類の両方が入っており、落ちた場所の条件次第だがそのまま増えていくことができるらしい。一方で子器からは子嚢胞子というのが飛び出す。こちらは菌類だけが含まれており、到着した先で適当な藻類がいれば増えていくことができるらしい。不思議である。君たちには種とか、個体とか、自分という概念がないのかね、と問いたくなる。この二つは、自分の分身が増えていくこと、自分の一部が違う種の他人と結びついて増えていくこと、のように感じられるから。

 不思議だなあ、そんなことを考えながら、また観察会等の機会があれば、参加したいなと思う。

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