哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

らくごカフェ10周年記念 平成最後の武道館落語公演 @日本武道館 のこと

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■らくごカフェ10周年記念 平成最後の武道館落語公演

 2019年2月25日(月)、東京は九段下にて催された、らくごカフェの10周年記念公演に行ってきた。らくごカフェとは、神保町の神田古書センターにあるこじんまりとした寄席であり、ドリンク付きで若手や中堅落語家の会が開かれる、彼らが新しい噺に挑戦する等、経験を積むことができる、そんな場所である、ようだ。というのも、私はらくごカフェの存在は知っていたが、実は足を運んだことはないので、見聞きした情報でしかないのである。

 さて、そんならくごカフェの記念公演に何故、仕事を休んで出向いたのかということであるが、このイベントにらくごカフェの定例公演である、火曜会に出演している若手・中堅落語家に加えて、席亭である青木伸広氏と旧知の仲である、人気落語家の立川志の輔談春両氏、それに歌手のさだまさし氏が出演なさるためである。

 そういうわけで、公演の感想を、記す。(以下、敬称略)

 

rakugocafe.exblog.jp

 

●オープニング~火曜会

 16時、席亭青木とさだの司会で幕を開ける。いや、幕はなかったが。本来であれば、落語をやるべきところであるが、そんな時間はないので、ということで、火曜会の面々が次から次へと、特技を披露する。蝦蟇の油売りの口上を披露した入船亭小辰がトップバッターだ。印象に残ったのは落語『味噌豆』を紙芝居にしてきた、柳家わさび。絵が上手く、語りも面白かった。また東京ヤクルトスワローズファンクラブ名誉会員さだとの共通点がヤクルトファン、ということでただヤクルトの応援スタイルで登場しただけの三遊亭天どんもある意味で、印象深い。

 その後、寄席の踊りに続いて、歌謡。柳家小せんのギターをバックに、さだの「秋桜」「茨の木」を、三遊亭わん丈、柳家こみちが歌い上げた。上手。10周年の挨拶は、蜃気楼龍玉。そしてお待ちかねの落語は春風亭一之輔による「堀の内」。

 この時点で17時。1時間遅く来ればよかったと思っているでしょう、と一之輔。そもそも、武道館で落語の独演会をやったこと自体、過去に一例しかなく、それが春風亭小朝、とのことだ。そして火曜会のメンバーで、その小朝の公演を見に来ていたのが、唯一、一之輔であったのだという。その小朝の公演で配られた、香水についての思い出話から始まり、「堀の内」のサゲを事前に説明してから噺に入る、妙なスタイル。粗忽話で、自分も粗忽(そそっかしい)故、サゲを間違えるかも、という枕で始まり、当然に最後はサゲを間違えてしまう、というサゲ。面白かった。

 

さだまさしのうた

 休憩をはさんで、北の国からの出囃子が鳴って、さだのコーナー。当初、火曜会があって、談春志の輔、最後にさだ、という構想だったようだが、さだ曰く、落語のイベントだから最後が歌というわけにはいかない。そうすると、自分が落語をやらなきゃいけなくなるから(さだと青木は國學院高校落研の先輩後輩である)、ということで、順番を変えた、とのこと。

 この時点で確か18分押しと言っていたと思う。自分が時間調整をする、だけどやることはやるから、と言ってステージに上がった、さだ。「案山子」「雨やどり」を途中で止めて小話を始め、一笑いさせて、また歌に戻っていく。小臼歯(小休止)のネタとか。結婚式での余興、エレクトーンのお姉さんの話についで、先ほどわん丈が歌った「秋桜」、そして「償い」は落語がただ笑わせるものではなく、人情を描くものなので、らしい。

 そして最後は「関白宣言」をやり始めて、そういう時代じゃないので、とやめての「関白失脚」。ラスト、頑張れを会場皆でコーラスさせたのが、流石ミュージシャン。頑張れ(頑張れ)頑張れ、落語家って、本当に格好良かった。それに会場が一体になった。ああ、来てよかったなあ、と思った。

 

談春志の輔

 そして、ここからは談春志の輔の落語についで、さだがアンサーソングを歌う、という趣向。青木の落語と歌の融合、というアイデアらしい。また、談春志の輔には、青木より噺をリクエストした、とのことであった。

 まず談春。今45分押しです、主な原因はさだの暴走です、とのこと。高座にかかったのは「紺屋高尾」。遊女高尾と染物屋の職人の恋を描いた、人情噺。談春の高座を生で見るのは初めて。人情噺をきちんと人情噺として、真面目に、上手く語り上げている印象を受けた。私自身は、もう少し軽い感じの方が好き。それとも、トリを前にして、そこまで客を沸かせないように控えたのか、どうなのだろう。それに対する、さだのアンサーソングは「いのちの理由」。

 そして、休憩挟んで20時。トリは志の輔。1時間押しです、私が出てきたのが、降りる予定の時間です、とのこと。

 かかったのは「八五郎出世/妾馬(新・八五郎出世)」。上手い。志の輔の新・八五郎出世は、CDで何度も聞いていた。その通りに、目の前で動く志の輔が語っている。面白かった。そもそもこの「八五郎出世/妾馬」、普通は八五郎が出世するのだが、志の輔八五郎は出世しない。その志の輔の新・八五郎出世のCDで、この噺を知ったため、私にとっては、この出世しない八五郎の方がなじみ深い。

 ラストはそれに対するアンサーソングとして、さだが「親父の一番長い日」を歌い、出演者みんなが出てきて、終演。結局、さだが歌で最後を締めているが、いいのか?

 

●総括

 途中でも書いたが、とにかく、行ってよかった。8,000円弱のチケット代金は、ほぼさだのコンサートの席料と同じ。ただの落語公演なら高額だが、さだの歌が聞けて、売れっ子落語家談春志の輔が聞けて、ちなみにお土産にプログラムと手拭いがついて、これは安い。予定の終演時間を大きくオーバーした、5時間のボリュームたっぷりの公演。面白かったです。史上二度目、そして平成最後の武道館での落語公演に立ち会えたということも、本当に記念になります。らくごカフェにも、行きたいと思いました。ホントに、よかったよかった。