哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

2022年6月の徒然なること

■2022年6月の徒然なること

 この連載タイトルの元ネタとなっている『徒然草』は“つれづれなるまゝに、日くらし硯に向かひて”と始まる随筆で、鎌倉末期から南北朝時代にかけて活躍した吉田兼好兼好法師)によって書かれました。清少納言の『枕草子』や鴨長明の『方丈記』と並んで、日本三大随筆などと呼ばれますが、私がこれらをきちんと読んだことがないばかりか、しばしば取り違えることは内緒です。

●絵画等のこと7.01「2022年春季企画展 千利休生誕500年 千利休をめぐる茶書の歴史 ―築き上げられた茶聖像―」@齊田記念館

 世田谷代田の齊田記念館にて開催中(〜7月15日(金))の「千利休をめぐる茶書の歴史」展を拝見した。

 千利休というと茶聖、完成した茶道家であり芸術家、というイメージだが、実際はどうであったのか。利休の弟子の山上宗二(秀吉とのいざこざから耳と鼻をそがれて処刑された人である)らによる書に残された利休の実像、そして虚像を探る、という企画。解説(キャプション)が非常に丁寧で大満足の見ごたえであった。

 例えば利休の茶会の記録を残した書物であっても、そこで描かれる茶会の様子等は作られたものであったりする。利休がある掛物を好んで用いたとなれば、それと同種の掛物は高く売れる、そうした商売上の損得のために、利休の虚像が築き上げられていった面もあるようだ。お近くにお出かけ、お時間のある方はぜひ。

●寄席ば良いのに0.01「RAKUGO UNIVERSE」@フリースペース無何有

 関西を拠点とするネオラクゴ家の月亭太遊さんと、関東で活躍する女性落語家の柳家花ごめさんによる落語会「RAKUGO UNIVERSE VOL.2」(2022年6月7日(火)、新宿・フリースペース無何有)を拝見した。

 ゲストの名古屋出身の上方落語家の桂三実さんや、当日京都から太遊さんについてきたという、桂文五郎さんと、普段お目にかかることの少ない、関西の方々の高座。喋りに勢いがあり、とても楽しく充実した時間をすごした。

 花ごめさんの「お見立て」は、何故か直近に拝見した落語会(後述)に古今亭文菊さんの高座で聴いており、あ、また、という印象。三実さん「早口言葉が邪魔をする」太遊さん「Chi~no~Re:」の両新作も面白くはあるのだけれど、一番印象に残るのは開口一番をつとめた文五郎さんの「商売根問」。調べてみると上方の噺で、おそらく長い噺をどこでサゲるか、バリエーションがあるのだと思う。雀の描写や鳩の演技をたっぷりと見せてくださり、汗だくになりながらの熱演で、なんだか引き込まれてしまった。

 お手伝いに来ていたという、林家けい木さん、三遊亭遊かりさんを交えてのトークも賑やかに大変面白く、けい木さんが監修しているという、女性落語家を描き「週刊少年ジャンプ」に連載中の『あかね噺』にも興味をそそられた。楽しい夜であった。

●寄席ば良いのに0.02「文菊千景」@アートスペース兜座

 2022年4月24日(日)、アートスペース兜座にて催された、落語家・古今亭文菊さんの独演会「第一回文菊千景」にお邪魔した。文菊さんの高座は、もしかしたらどこかの寄席で聴いているのかもしれないのだけれど、あまり記憶になく、今回が初めてであったのかも……。

 開演冒頭、5分間は写真撮影可とのことで、記者会見のような有様に。20名限定での開催とのことで、こじんまりした空間で生かつ拡声しない(マイク等を通さない)落語を、間近で聴くことのできる、大変贅沢な2時間であった。高座の建付けが悪く途中で異音がして、師匠が恐怖心を抱くというのも、師匠自身が仰っていた通り、ライヴならではの出来事で、思い出に残るものである。

 かかったネタは、一席目が「あくび指南」、芸としてのおあくびを教えるお師匠さんと、それを習う八五郎を丁寧に演じていらっしゃり、初めて落語を聴かれる方にもわかりやすかったのではないかと思う(本独演会のコンセプトは初めての人に落語を聴いてもらうこと、だそう)。

 ニ席目は「お見立て」、吉原の遊郭、面倒な馴染客の前に出たくない喜瀬川花魁と、若い衆の喜作と、富農杢兵衛が登場する。杢兵衛の前に出たくないという花魁のわがままを聞いて、喜瀬川は入院している、死んだと嘘を付く喜作に対して杢兵衛は……、という話。舞台は吉原という非日常だけれど、描かれる人々の面倒くさいという感情は現代の我々にも共通するもので、面白い。

 今回の主催者は、文菊師匠のファンの方たち。師匠への愛が詰まった素敵な会であった。今後も楽しみである。

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