哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

2022年8月の徒然なること ~ Ado 2nd ワンマンライブ「カムパネルラ」他

■2022年8月の徒然なること


LAITIER in 国立能楽堂(東京都渋谷区)

 引き続き本業がバタバタしていることが多いです。仕事をしていると楽しいことも嫌なことも、たくさんやってきます。本当に、色々。思い返すとこれまでは、そのたくさんを止める方向で生きてきたように思います。いまは、楽しいことを大切にするために、とりあえずそのたくさんを止めずに引き受けることができるようになりました。ま、そのたくには山ほどの嫌なこともひっついてるので、楽しいことだけひっ掴んで、逃げるのですけどね。

●絵画等のこと9.01「特別展アリス へんてこりん、へんてこりんな世界」@森アーツセンターギャラリー

 森アーツセンターギャラリー[六本木ヒルズ森タワー52F]にて2022年10月10日(月・祝)まで開催中の「 特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―  」を拝見してきたので、感想を述べる。

 作者ルイス・キャロル(チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)やアリスのモデルであるアリス・リドゥルの黄金の午後の思い出、家族写真、アリスの物語や挿絵に影響を与えたと思われる先行作品、校正原稿やら挿絵の習作やら、それにアリスの童話を受けて誕生した舞台、映画、アートやファッション等、アリスにまつわる様々な事物を集めた展示。英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)を皮切りに世界巡回中なのだとか。

 展示の入り口はキャロルが物語を生んだ黄金の午後の様子が、小川に漕ぎ出すボートの音などで演出され、一気に彼らがすごした時間に入っていくことができる。以降も挿絵などの作品を見せつつ、ちょこちょこインスタレーション展示で、アリスが旅した不思議の国や鏡の国の一端を味わうことができる。変な頭身に見える鏡やら、ティーパーティーの様子やアリスの涙でできた洪水の映像等。

 挿絵で印象に残っているのは、ジョン・テニエルによる「鏡の国のアリス」の挿絵で、アリスが鏡に入っていったときの挿絵は、テニエルのサインも鏡文字になっているのだそう。そこまで細かく作り込んでいるとはと驚く。不思議の国、鏡の国とも、読んではいるが、そこまで深くは味わっていないので、改めてじっくり読んでみたくなる。

 派生作品では、アリスを題材とした映画や舞台のポスター、バレエの衣装も。ヒグチユウコによるアリスやら、ダリが挿絵を描いたアリス等も、テニエルのそれと印象が異なり面白い。本展では展示されていないけれど、私にとってテニエルやディズニー以外のアリスは、トーベ・ヤンソンによるアリスが印象深い。もう15年も前になるが、トーベ版アリスが村山由佳訳で発刊され、トーベ、村山ともに大好きな私は大変に興奮したものである。

 出展作品は原則的に3点以上が収まる形で撮影OK(1点に寄って撮るのはNG)とのこと。展示図録がヴィクトリア・アンド・アルバート博物館での展示に対応したもので、必ずしも日本展示と同じではなさそうだったので、気になる作品は記録に残すことをおすすめする。

●寄席ば良いのに0.03「第二回文菊千景」@アートスペース兜座


古今亭文菊

 ご縁があって、こじんまりとした空間(日本橋の アートスペース兜座 )にて古今亭文菊の高座を聴く会「第二回文菊千景」にお邪魔してきた。主催の皆様が手作りしているような、素敵な空間・時間で前回に続き大変楽しんだ。

 20名程度の少人数で生声の噺を聴くことができるのは、大変に贅沢で、演者が近くてよい。マクラに文菊のキャラクターも出ていて、より好きになる。

 4月の第一回で聴いた「あくび指南」「お見立て」や7月の上野鈴本で聴いた「稽古屋」はいずれも、文菊の演技の上手さや醸し出す色気を感じさせる話であったが、長屋に幽霊や狐が嫁入りしてくる「安兵衛狐」、暑い日にお屋敷で聞いた旦那と奥方のやり取りを真似しようとする植木屋がおかしい「青菜」、この日の二題はおおらかに元気よく演じて下さり、もちろんその演技はとてつもなくリアルで上手いのだが、それ以上に明るさや楽しさを感じさせる高座でとてもよい。

 「安兵衛狐」はニ席目のマクラで師匠もおっしゃった通り「野ざらし」に似て、墓場で供養した骨が美女の幽霊になって恩返しに来ることが発端。「青菜」の植木屋夫婦はとても楽しい夫婦。奥さんは口は悪いけれど、旦那に付き合って、蒸し暑い押入に隠れて一緒にお芝居してくれるのだから、仲良しだ。どちらも夏にピッタリの作品、ひと夏の良い思い出となった。

●2022年8月11日(木・祝)Ado 2nd ワンマンライブ「カムパネルラ」@さいたまスーパーアリーナ のこと

 令和4年8月11日(木・祝)にさいたまスーパーアリーナにて催された、Ado 2nd ワンマンライブ「カムパネルラ」を拝見してきた。


【以下、ネタバレを含みます】

 ご存じの通り、Adoは顔出しをしていない歌い手なので、ステージ上でも強い逆光や(おそらく特殊な)ガラス越しの登場で、私の席からはシルエットのみしか拝見できなかった。ただ、歌いながら精一杯、全身を使って会場を盛り上げようとなさっていらっしゃり、声とアー写だけだった方が目の前で肉体を持って動いていらっしゃるというのは感動的である。
 一曲目「夜のピエロ」から「ラッキー・ブルート」「ラブカ?」と続き、曲と映像に引き込まれる素晴らしい内容で、そこから一気に「心という名の不可解」まで、ほぼほぼMCなしで走り続け、あっという間の一時間半であった。MCでAdo本人が銀河のようと称したペンライトの明かりもとても綺麗だった(まさにカムパネルラ、銀河鉄道の夜のイメージなのでしょう)。新型コロナ感染症対策で声出しNGの中、それでも光や手拍子で会場が一体になっていました。
 原曲でも非常に歌唱が美しい「会いたくて」は、暖かみのある光の映像とともに、ライブでもとても綺麗な曲であったし、アンコール前の最後の一曲「心という名の不可解」は大好きな曲。どれもこれも歌うのが難しそうな持ち歌を、オリジナルよりも張ったパワフルな声で披露くださり、元気をいただいた。
 アンコール後はお色直しなさって、「新時代」に続き椎名林檎の「罪と罰」のカバー。私は学生時代に椎名林檎にハマっていた時期があるので、そうした意味でもAdoさんが披露してくださり大変ゾクゾクした。
 そして記念すべき2nd ワンマンライブが何故さいたまスーパーアリーナ? と思っていたのだけれど、MCでご自身がさいたまスーパーアリーナである歌い手さんのライブをご覧になった話を披露くださり、夢の舞台だった、あのとき客席で見ていた自分が今の自分を見てかっこいいって思ってほしいなと、そうしたお話をAdo本人の言葉で、訥々とお話くださり胸に響くものがあった。自分で自分のステージを見ることはできないので、その分お客様一人ひとりの目に焼き付けてほしいと。
 最後ニ曲は「うっせぇわ 」と「」。特にAdoさんの代名詞とも言える「うっせぇわ」は、生で聞けて嬉しかった。力強くライブ映えする曲。楽しい一夜であった。Adoが登場人物ウタの歌唱を担当している映画「ONE PIECE FILM RED」も、時間を見つけて曲を聴きに行きたいなと思う。『ONE PIECE』全く知らないけど……。

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