哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

終わらないこと

■終わらないこと

 色々なことが終わらなくて、焦りを感じている。

 そんなことを共有しても、その一つ一つは終わらないから焦りは消えないのだけれど、それでもとりあえずここに書いてしまうのは、このブログ「哲学講義 仇櫻堂日乗」の執筆も、終わらないことの一つだからである。いや、これについては「終わらないこと」ではなくて、「始まらないこと」かもしれない。

 自分がそこそこ文章が書けるということに気がついたのは、高校時代に戯れに書いた小説を友人に褒められたからだが、以来、何かを書く、それだけなら多分世間一般よりは得意なのではないかと思っている。文章の質ではなく、量の点で。書き始めてしまえば、それなりに書くことはできる。書かれたものが面白いか否か、美しいか否か、それは知らない。とはいえ、世間一般よりも量は書ける、その自信はあっても、仕事(本業)として書いていくにはまるで足りない。文筆家として禄を食むには、おそらく世間の上位数%には入る程度の、文章の量ないし質を生産し続ける能力が求められると思う。私がいま主張したいのは、量に関しては上位50%に入っていると思いますよ、それだけのことだ。質に関しては、同じ位に収まっていれば良いなと思うけれど、こればかりは自分では判断できない。書き手としては最高の……、いや、でもそこそこ良いものを書いているつもりで書く。少なくとも、世間の上位50%には入っているだろう、そのくらいの気持ちでは書いている。しかし、文章の質についての判じ手は常に書き手以外の他者である。だから、わからない。

 それでも量は書けてしまう。こうして中身のないものであれば、いくらでも言葉は出てくる。私にとってはこれが普通であるのだけれど、大学・社会人と進むに従って、そうでないという人がいることもわかってきた。特に仕事の中で文章を書く機会を得て、より一層それを感じるようになった。誰かに何かを伝える文章を書かなければならないときに、本当に言葉が出てこない人も多いのだ、と。結構、本を読んでいそうな人でも文章を書けない人が多いのは、不思議である。不思議ではあるが、どうもそういう人もいるらしい。

 そしてこうして考えていて思い出したのは、小学生時代の読書感想文の進まなかった、終わらなかったこと。ちょうど新潟のトキが話題で、トキについて書かれた本を読んでフリーズしていた自分を思い出す。目の前の固い単行本を眺めて、読書感想文になりそうな言葉をひねり出そうとしていた。今このブログ等で、読書感想文らしきものを時折書いている。読書感想文とはその本についてだけ、その本を読んで生まれた感情についてだけ語る場所ではないのだ、と言うことに気がついたのは、多分大学で文学(文芸)を専攻していた頃だ。「暑い日であった。前日に降った雨が蒸発し、身体中にじめじめとまとわりつく縁側で、僕はなかなか読み終わらないそれと、格闘していた」そんなことを書いても良いのだ。あるいは、トキから派生して鴇色のことや、新潟のこと、その他の生きもののこと等、思い浮かぶままにただ筆を走らせれば良いのだ。求められているのは本という物体のまとめではない、読書という経験からくる感想なのだから。

 ほら、こうして中身のないものであれば、いくらでも筆は進むのである。ただし、思考に任せて書き続けていくと話は、本来したかった「9月11日(日)の第一回松戸古民家古本市」のことや「9月18日(日)の第六回本八幡夜の屋上古本市」のこと、あるいは仕事の中で私が抱えている悩みなどを置いてけぼりにして、ずんずん突き進んでしまう。だから、このブログの記事は、きちんとテーマを決めて、それについて調べながら書くのだ、そう思っていたのだけれど、そのテーマを決める、あるいは調べるということに関して、私にはあまり才能がないようである。

 故に文章を書くことが「始まらない」。「始まらない」以上「終わらない」。しかし「終わらない」ことにはブログは投稿されないわけで、毎週投稿という自分で自分に課した枷が果たされない。仕方なく「終わらないこと」という曖昧なテーマで書き始めて見たところ「始まらないこと」についての話が「終わらなく」なり、こうした事態に陥るため、やはり事前にテーマを決めたり、調べたりしたほうが良いのだと思う。

 

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