哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

2022年7月の徒然なること

■2022年7月の徒然なること


鳩やぐら(東京都渋谷区)おばんざい定食(1,500円・8月3日まで)

 勤め先のあるイベントに際して、近隣飲食店にご協力いただき、京都にまつわるメニューを提供いただいています(8月3日(水)まで)。千駄ヶ谷にお越しの際はぜひ、ワインビストロアンフォラさん、東京厨房千駄ヶ谷店さん、鳩やぐらさんに足をお運びください。私の勤め先には、別に来なくていいです。

 

●2022年7月26日(火)第35回久習會 @宝生能楽堂 のこと

 宝生能楽堂にて第35回久習會公演を拝見したので、以下に感想を記す。


NEW YORKER'S Cafe(東京都文京区)

 舞囃子「春日龍神」の雲龍櫻子さんはこれが初舞台とのこと。

 能には一曲を通して上演する他に、その見どころだけを謡と舞で披露する仕舞や、同じようにダイジェストで、お囃子(笛、小鼓、大鼓、太鼓)と謡、舞で披露する舞囃子がある。この際、シテ(主役)は能面や能装束(衣装)をつけずに、素顔、紋付袴姿で舞うので、能よりも身体の動きなどがよくわかり、仕舞は能のデッサンとも言われる。

 本曲は大陸に渡り修行しようとする明恵上人を、春日大社神職が押し留め、龍神が現れて霊鷲山の様子を見せる、という流れで、今自分がいる場所で法を求めることの大切さを表しているとも。跳び回り颯爽とした龍神の舞がかっこよかった。次回はぜひ、能面・装束をつけた、能で拝見したいと思う。

 野村萬斎さんによる狂言「大般若」は、ある檀家で大般若経を読経する僧と、御神楽を舞う巫女が鉢合わせた場面を描くもの。仏教と神道が相争う様が滑稽で作意を考えてしまう作品である。「春日龍神」も仏教徒が仏教の本場を目指そうとするものを、神道が押し留める話なので、そうした繋がりも考えた番組構成なのだろうか。

 ともあれ、そうした考察を抜きにして笑って楽しめる内容ではあると思う。

 荒木亮さんによる能「鳥追舟」は、薩摩川内の日暮長者の伝承に取材した曲。伝承は、主人の留守中に後妻に追い出された先妻の子供(姉弟)が、家来や後妻に言いつけられて、来る日も来る日も田の鳥追い(田を荒らす野鳥を鳴子や羯鼓で追い払う)をさせられる。川を隔てて母(先妻)と再会するなどしていたが、結局は身を儚んで死んでしまう、という悲話。能には後妻は登場せず、家来と母子の関係を抽出した作りとなっており、ハッピーエンドで終わる。

 舞がほとんどなく、謡(掛け合い)で進行する(歌舞劇というより科白劇の趣である)ため、詞章(台詞)重視で鑑賞する私にとっては、観やすい曲であった。

 子方(子役)の根岸しんらさんの御舞台を楽しみにしているのだが、いつも通り元気な謡に加えて、響きの美しさに磨きがかかったように思われ、感動した。そんなことを知人に話したところ、今回の会場である宝生能楽堂は音響が非常に良いそうで、謡がよく響く、という意見があるそう。勉強になる。

 

●絵画等のこと8.01「泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅱ 光陰礼讃―モネからはじまる住友洋画コレクション」@泉屋博古館東京 のこと


Zum Einhorn(東京都港区)

 「泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅱ 光陰礼讃―モネからはじまる住友洋画コレクション」を拝見したので、感想を記す。

 住友コレクションの一角を占める近代洋画は、住友吉左衞門友純(春翠)が明治30年(1897)の欧米視察中のパリで印象派の画家モネの油彩画2点を入手した事に始まるそうで、住友さんが各所から集め、あるいは須磨別邸(1945年に戦災で消失)に飾ったという、数々の洋画を拝見、コンパクトで良い展示であった。最も私が気に入った作品は以下の通り、洋画といえど日本人の筆によるものであった。

 

吉田ふじを「神の森」 本展示一番の私的ヒット作。光の扱いが美しい。と思ったら、吉田ふじを(1887-1987)は私の好きな洋画家・版画家の吉田博(1876-1958)の妻なのだそう。なるほど!

鹿子木孟郎「加茂の競馬」 ウマイル。上賀茂神社にて行われる競馬(くらべうま)を描いている。平安時代の寛治7年(1093)に宮中で行われていた競馬を移して依頼続いているものだそう。鹿子木孟郎(1874-1941)はパリで知遇をえた浅井忠とともに関西美術院を創立したそうで、先日の記事で紹介した津田青楓は、鹿子木・浅井に師事していたそう。

岡田三郎助「五葉蔦」 キャプションで浴衣美人と評される作中人物が、ちゃんと美人で感心した。岡田三郎助(1869-1939)は女性像を得意とした洋画家・版画家だそう。

河久保正名「海岸燈台之図」 銚子の犬吠埼灯台を描いた作品で、須磨の海岸を臨む別邸一階に飾られたそう。海岸の屋敷にこうした海岸の絵画を飾るとは贅沢である。川久保正名(生没年不詳)は大蔵官僚でありながら、画業にも取り組んだ人物だそう。

 

●2022年7月24日(日)舞踊・女方の会 @国立劇場 のこと


おかめ(東京都千代田区

 国立劇場にて藤間清継さんらによる「舞踊・女方の会」を拝見した。能では見慣れた「道成寺」が短く、なんとなくポップになったような印象で、キビキビとした出演者の動きが楽しい。衣装や扇がまさに、実在する能の装束や扇のレプリカといった印象で安っぽく思われる。ただし舞踊はセット(大道具)もあり華やか、現代的な感覚に(能よりは)伝わりやすいのだろうか。

 

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