哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

仕事はどこでもできるということ

 
■仕事はどこでもできるということ

f:id:crescendo-bulk78:20180429094848j:plain

 図書館で借りていた本を返しがてら、図書館の閲覧席で読み残しを読了して、読書記録をつけてこれの執筆をするという目標が、初めからとん挫した。理由は図書館の休館である。家に戻って、読み残しを読んで、読書記録をつけて、また図書館に本を返しに来るというのも癪であるし、なんとなく天気がいいので、図書館近くの川沿いの公園にて虫にまみれながら作業するのもまた一興かと思い、こうして昼日中の野外でパソコンをぽちぽちしているが、しかしどこでも仕事が出来るというのは、よい時代になったものだと感じている。

 こういうのを何ていうのかしらんと思って調べていたら、ノマド遊牧民)というらしい。ノマドたちが集まると、コワーキングとかになるらしい。まあ、横文字はよくわからんので、このくらいでよしとする。

 

■『嫌われる勇気』を読了したこと

 『嫌われる勇気』を読了したことを、ここに報告する。まず私が感じ入ったのは普通であることの勇気、という話である。人は誰もが優越性を追求しているそうだ。これは特別でありたい、目立ちたいということのようである。目立ちたい、というのは他者より優れていたい、あるいは劣っていたい、ということのようだ。仕事や学業で優れた成績を残す、これで名を知られて目立つこととが第一であるが、それがかなわなかったとき、人は極端に劣ることで目立とうとする。例えば授業中に騒いで、進行を妨害したり、不登校になって引きこもり、家族の注目を集めたりすることだ。この本の主題となっているアドラー心理学の面白いところは、世の中を原因と結果ではなく、目的で考えるため、例えば病気で引きこもっている人間についても、引きこもりたい、社会にでたくない、人々の注目を集めたいから、病症が出ている、と考えることである。それはともかく、そういった形で、目立ちたいという気持ちを持っていると、普通として生きることができなくなる。しかし、普通であるということは、無能であることではないのだ、と説いている。

 確かにそのとおりであると思う。私はある時から、ある種の劣等感を抱えて生きていた。普通に働きたい、普通に恋愛して、普通に生活したい。これについて、普通の言語化が不十分であると指摘してくれた方がいて、なるほどと思い、それ以来遠い目で見て普通を目指すのではなく、まず今日具体的に何をすればよいのだろうという言語化ができるようになってきたため、着実に前に進んでいる感はあるのだが、それはともかく、そういう思想を持っているので私には普通が無能ではないのだ、ということはすんなり受け入れられることであった。

 一方で確かにこれまで多くのことを成し遂げ、例えば学業が優秀であったり、部活動で主力であったり、あるいは仕事で成果を出し続けて出世している人などは、確かに普通になることは自分が特別な存在から、普通の人、集団の中の一人に落ちることのようで、不安になるのだろうなと感じた。しかしそういった普通の人でさえも、いや人はだれしも、存在するだけで世界という共同体の一部であり、他者に貢献しているのである、だからみんな、そんな自分を、たとえ普通であったとしても、いやきっと普通よりずっと劣っていたとしても、他人の役に立っているのだから、認めてあげようぜ、そうしたらハッピーになれるよね、うん、それに自分はそうやって他者に貢献できていると思っている、だけどホントのところ、貢献できているかどうかを検討するのは他人なわけで、でもでもそれは他者の課題だよね、自分の課題と他者の課題は分離しようね、自分ができることはやってそれで貢献した気になっていればいいじゃんそれで、そういう意味では、他者が自分をどう評価しているかを気にして動くんじゃなくて、自由になる必要があるんじゃない、そうそう、Be Freeだよね、だけど他者の評価を気にしないで動くこと、好かれるように頑張らないこと、嫌われてもいいと腹をくくること、そう、嫌われる勇気が大事なんだねー、ってことらしい。

 一読して振り返っただけなので、読み違えている部分はあるかもしれないが、ひとまず私はこのように納得している。総じて面白い本であった。日常抱えているもやもやの結び目がほどけたと思う。

↓ Recommend ↓