哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

あいみょん「愛の花」のこと

あいみょん「愛の花」の傾向と対策について考える

 NHK連続テレビ小説、植物学者牧野富太郎をモデルとした主人公を神木隆之介が演じる「らんまん」が、今年2023年4月から半年間放送中である。本作の主題歌はあいみょんによる「愛の花」、良い曲なので紹介しよう。


鳩森八幡神社(東京都渋谷区)

 「愛の花」を初めて聴いたのは、今年の4月のことである。つまり「らんまん」の初回放送(を録画で観た)時である。あ、いいなと思った。あいみょんの柔らかく透き通った歌声と、オープニング映像で映し出された緑、植物学者に扮した爽やかな神木隆之介の笑顔がとても良かった。特に良かったのは神木隆之介である。しかし確かに曲も良かった。

 伴奏のアコースティックギターが良い。鍵盤、管弦、バンドの音も入っているけれど、それらは賑やかしであいみょんの弾き語りだけで全てが成立しうる曲である。そのシンプルさが、あいみょんの歌声を等身大の一人の人間の感情という風に感じさせる。

 詞もまたシンプルだ。一人の人間(語り口からは女性?)が、愛する相手(貴方という表記からは男性?)を待ち、また愛を伝える、そんな内容だ。その中へ「今は 今は」「全て 全て」という繰り返しや「為/種」「逢い/愛」といった押韻等の言葉遊びが、丁寧に盛り込まれている点、耳障りが良く面白い。

 そしてそのシンプルさゆえにまた、あいみょんの描いた物語はいかようにでも読み取れる。「恋に焦がれた人は 人は 天の上」という意味深な表現を始め「今を憎んではいない」「命ある日々」「涙は枯れないわ」等々、愛する相手の不在を歌っており、そこには死を感じさせつつも、「空が晴れたら 逢いに 逢いにきてほしい」「木漏れ日と笑う 大切な人を 失う未来なんてこないで」のように再会を暗示させるような言葉も……、ああでも読めば読むほど死別に感じてきた。まあ、それでも希望のある歌詞にも読めるし、悼んでいる歌詞にも読める。

 ともあれ本曲の歌詞で、私の好きな一節は冒頭「言葉足らずの愛を 愛を貴方へ」である。人を愛する時、私は様々な感情を抱く。良いものも悪いものも、美しいものも汚いものも、無限の感情を有限の言葉で書き記すことはできないので、愛は常に言葉足らずである。そんなことを、考えたりもする。

 

 余談であるが、良い朝ドラには良い主題歌が多いと思う。今回の「らんまん」(主演:神木隆之介)の主題歌「愛の花」(あいみょん)以外に思い出す限りだが、本ブログでも取り上げた「おかえりモネ」(主演:清原果耶)の主題歌「なないろ」(BUMP OF CHICKEN)、「エール」(主演:窪田正孝)の主題歌「星影のエール」(GReeeeN)、「べっぴんさん」の主題歌「ヒカリノアトリエ」(Mr.Children)等。ドラマが良かったから曲もよく感じているのか、曲の良さがドラマの良さを引き立てているのか、それは知らない。

 

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