哲学講義

仇櫻堂日乗

【まえがき】会社勤めの傍ら、趣味で文章を書いています。私の日常での出来事や考えたことに加えて、読んだ本、鑑賞した美術などの展示、コンサートや能楽公演の感想、それに小説などの作文を載せます。PC表示ですとサイドバーに、スマホ表示ですと、おそらくフッターに、検索窓やカテゴリー一覧(目次)が表示されますので、そちらからご関心のある記事を読んでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

絵画等のこと⑥どうぶつかいぎ展 @PLAY! MUSEUM

■絵画等のこと⑥どうぶつかいぎ展 @PLAY! MUSEUM

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SUBURBAN COFFEE(千葉県千葉市

 先日、地元を歩いていると、近所のパン屋さんにて何やら怪しげな珈琲ショップが出現していた。怪しがりて寄りて見るに、 月に2回パン屋さんの店先に出店して、美味しい珈琲を飲ませ、好みのレコードを聴かせるお店だそう。お店のお姉さんの楽しいレコード解説付き。私は生まれて初めてレコードを選んで(friendlyscienceorchestraによるBrazil)、針を落とす体験をさせてもらった。ぷつぷつぷつと言ったあとに、音が! 鳴った!  感動!! SUBURBAN COFFEEさん、どうもありがとう。



 そもそも夕方、地元をトボトボ歩いていたのは、立川くんだりまで出向き、PLAY! MUSEUM にて、「どうぶつかいぎ展」(2022年2月5日~4月10日)を拝見した帰り道。絵本『どうぶつ会議』はドイツの作家エーリッヒ・ケストナーと画家ワルター・トリヤーによって、第二次世界大戦後に出版された。展示ではヨシタケシンスケのイラストにより、出版の経緯が説明されている。

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『どうぶつ会議』(ケストナー/トリヤー/岩波書店

 私は絵本の方も未読だったので、ミュージアムショップで購入して帰り道に拝読した。戦争をやめない、(戦争を止めるための会議もまとまらない、)人間の大人に呆れた動物たちが、ただ人間の子どものために、団結して戦争を止めさせるというお話。名作だと思うが時代なりに人種や男女への差別が配慮されていないのでは、という表現は多い。例えば出てくる動物たちは男が多く、女は妻・母としてしか登場しない点等である。

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秦直也(イラストレーター)

 しかし、その反戦への願いは、ロシアによるウクライナへの侵攻が続く現在だからこそ、より身近に感じられるもの。戦争は政治の中の争いを、一般人とくに子どもにまで広めてしまう、心も身体も傷つけてしまうものだと、改めて認識させてくれる作品であった。

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年間展示「ぐりとぐら しあわせの本」展(2021年4月10日~2022年4月10日)

 展示では『どうぶつ会議』の原画とともに、イラストレーターのヨシタケシンスケら、現代の日本のアーティストが本書の各シーンやその後を翻案、イラスト、絵画、ぬいぐるみ、彫刻、インスタレーション作品にして展示している。同時開催の年間展示では「ぐりとぐら しあわせの本展」として、ぐりとぐらの世界に入っていって探検できるような内容。どちらの展示も、観るだけでなく五感すべてをフル動員して、子どもも大人も一緒に楽しめる内容である。

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菱川勢一(映像作家)

 とくに印象に残っているのは「いざ、動物会議」と題した菱川勢一によるインスタレーション(空間)展示のフロアである。動物たちの会議を、時折ぴょこぴょこ動く毛玉たちや、ぱたぱたと羽ばたいている光の翼、動物たちの鳴き声で表現しており、室内にいながら自然・動物に囲まれているかのような不気味な感触がした。一続きのフロアの、鴻池朋子現代美術家)、junaida(画家)による展示と併せて、この世界には日頃目にしている人間(の大人たち)の世界だけではなく、動物や植物、子どもたちの世界が確かに存在していて、戦争しかり、環境破壊や疫病等でそれらのパランスを崩して、存在を脅かすようなことがあってはならないと、改めて感じさせる内容である。

 先に記した通り、本日(3月13日)現在もロシアによるウクライナ侵攻が続いている。ことは、9~13世紀のキエフ大公国の時代まで遡るというから、問題は根深い。ロシア、ベラルーシウクライナは同じようにキエフ大公国を文化的ルーツとして持ち、そうした近さゆえの争いもある。またウクライナは常に、ロシアやモンゴル、オスマントルコや西側のヨーロッパ諸国の動きに翻弄されてきた土地だそうだ。ヨーロッパで七番目の人口を有しながら、発展途上国であり、高い貧困率と政治汚職に悩まされる。肥沃な農地から世界有数の穀物の輸出国だそう。

講談社はロシアのウクライナ侵攻を受け、漫画配信サイト「コミックDAYS」で、田素弘(でん・もとひろ)さんの連載漫画「紛争でしたら八田まで」からウクライナに関する6話の無料公開を始めた。(「紛争でしたら八田まで」 ウクライナ巡る6話 講談社無料公開 | 毎日新聞

 正直、事情は私にはよくわからない。だけど、武力に訴えることは、決してあってはならない。民間人、特に子どもたちが命の危険にさらされ、恐怖の中ですごしている現在の状況は、一日も早く終わってほしいと思うのだ。

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